見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一七一

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「賢者サルバス様は明日お見えになる。俺たちはもう段取りは済んでいるが、レオにはぶっつけ本番でやってもらう事になる。これはもう仕方がない。時間がないからな」

 マズルが落ち着いた声で言った。

「明日なんて急な予定に、わざわざ俺を無理に参加させる意味などないだろう」

 俺はマズルに言った。

「普通はそうなんだが……情報屋の話ではネオジョルトの奴らがサルバス様を狙っているという噂があるらしい」

 俺は頭が痛くなりそうなのを顔に出さないよう注意した。
誰がそんな噂を流しているのか。
俺は誰にも一言も言っていない。
頭に浮かぶのはオオムカデンダルの顔だが、いくら彼でもそんな事をする意味が思い付かない。
だったら俺をここに向かわせた意味はなんなのだ。

 他の面子もそんな事は言わないだろう。
だいたい、俺たちは誰とも接触がない。

 そんな凄腕の情報屋が居るのか。
にわかには信じられなかった。

「テロリスト集団ともなれば、本当は警備隊では若干手に余る。本来は兵士の出番なんだが、うちには知っての通り兵士は居ないからな」

「大丈夫ですよ。俺たちはそこらの兵士に負けるとは思っていません。テロリスト相手でも十分にやれます。それにうちには隊長も居ますしね」

 ヒスタがそう言って笑顔を見せた。

「そうであってくれれば良いんだがな。情報のない相手では油断はできん。常に最悪を想定していてくれ」

 マズルが真面目な顔で言う。
同一人物とは思えないほどきちんとしている。
伊達にブラックナイトを蹴った訳ではなさそうだ。

「……で、俺はどうすればいいんだ?」

 俺は話の先を促した。
事の真相が判らない以上、それが判るまでは彼らの予定に従う方がいいだろう。

「うむ。レオには俺と一緒にサルバス様の直接警護を頼みたい。他の隊員は遠巻きに警護するチームと周辺を警戒しながら巡回するチームに別れている。今までは俺が一人で直接警護する予定だったんだが、お前が来てくれたお陰でより完全な体制で警護できる」

 なるほど。
ややこしい話じゃなくて助かる。
それに賢者に最も近いポジションと言うのも良い。

「でもさあ、賢者様と言えば伝説のドラゴンクラスでしょ。ブラックナイトよりも上。世界に何人残っているのかも判らないんですよね。俺たちが警護する意味あります?」

 確かに。
現状、冒険者の階級制度は一番上がブラックナイトだ。
ブラックナイト級の冒険者とは世界存亡の危機には、作戦参加が絶対的に義務づけられているほど強力な存在だ。

 超一流のもっと上、最高級冒険者、それがブラックナイト級だ。
ドラゴン級は正式な階級ではない。
人々が尊敬と畏敬の念を込めてそう呼ぶのだ。
ブラックナイト級よりも上だとされるその実力は、もはや伝説的な力を持つとされる。
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