見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一八二

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「……なんで判った」

 俺はオオムカデンダルに尋ねた。

『麓でお前らが騒ぐからだろ。ここから目と鼻の先だぞ』

 確かに。
しかし、麓から山腹までは結構ある。
それが聞こえたと言うのか。
しかもこの夕立の中で。

 本当かどうかは判らない。
もしかしたらまた動物を放って見ていたのかもしれないし、俺の目を通して見ていたのかもしれない。
いや、そのくらいの事があっても俺は驚かない。

「……何をぶつくさ言っているんだ」

 訝しみながらも、ヴァンパイアはすぐに攻めてくる。

 シュ!シュザ!

 ヴァンパイアの連続攻撃を身を捻ってかわす。
剣はさっき取り上げられた。
新たな武器を拾わなければ。

『おい、質問は終わってないぞ。なぜ苦戦しているんだと聞いている?』

 オオムカデンダルの声がイライラしている事を知らせた。

「なぜ?相手はヴァンパイアだぞ」

 俺はヴァンパイアの攻撃をかわしながら答えた。

『何言ってるんだ!お前がヴァンパイア如きに負けるわけないだろう!なんの為に改造してやったと思ってるんだ!』

 耳の奥にオオムカデンダルの怒声が轟く。

 以前は全く歯が立たなかった。
今は善戦している。
怒られるような事はないと思うが、オオムカデンダルはひどく立腹していた。

『……おい、レオ。変身しているのか?』

 声が変わった。
この声は蜻蛉洲か。

「いや、まだしていない」

『早く変身しろおーっ!』

 オオムカデンダルの叫びが遠くで聞こえる。

『……ならば早く変身したまえ。百足が今にも飛び出していきそうな勢いだ』

 蜻蛉洲が静かに言った。
後ろで令子がオオムカデンダルをたしなめているのが、かすかに聞こえる。

「……他に同行者が二名ほどいるんだが、良いのか?」

 俺は本当に正体を晒して良いのか確認した。

『誰だ?』

「町の警備隊隊長のマズルと、帝国の賢者サルバス様だ」

『賢者?もう捕まえたのか』

 蜻蛉洲の声が高くなった。

「捕まえたのとは違うが、実はそっちに向かっていた。そしたらヴァンパイアが待ち伏せしてたって訳だ」

『こっちに?……まあ、詳しくは後で聞こう。こっちに来るなら連れてくるがいい。大歓迎だ』

「いや、あの変身しても良いのか……?」

『ん?ああ、好きにしろ。片方の警備隊隊長は、別にどうとでもなる。不都合なら殺しても良いぞ』

 さらっと言うな。
秘密結社だと言うことを、こう言う部分でたまに思い出す。

『では、早く連れてきたまえ。百足が飛び出す前にな』

 そう言って声は聞こえなくなった。

 シャ!

 紙一重でかわしたヴァンパイアの爪が頬をかすめる。
軽い熱さを感じる。
その部分を手で触ると血が出ていた。
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