見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一八八

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 やがてワーウルフは全滅した。
完全に殺した。
ヴァンパイアはアンデッドだ。
その力が他者に及ばない限りは、彼らが蘇ることは二度とない。

 後で墓穴でも掘ってやるか。
なぜかそんな気持ちにもなっていた。

「どうした。次は何をするんだ?」

 俺はヴァンパイアに尋ねた。
実力で敵わないと見て、小細工に走っているな。
俺は決着を予感した。

 だが、現れないことには攻撃手段がない。
まさか、本当に逃げるつもりじゃないだろうな。

 ヴァンパイアは沈黙を保っている。
しかし居る筈だ。
こちらを見ているのは間違いない。
どこだ。
どこにいる。

 雨は一向に止む気配がない。
この雨がヤツがここに居る何よりの証だった。

 この雨はヤツが降らせている。

 本人がそう言ったのだ。
間違いない。

「オオムカデンダル。見ているんだろ?どうすればいい?」

 俺はオオムカデンダルに問い掛けた。

『何でもかんでも頼るんじゃない……と言ってもこの世界の人間には知識が足りないからな。仕方がないか』

 オオムカデンダルはそう言いながらため息をついた。
そう言いつつも、何だかんだと答えてくれるオオムカデンダルは案外面倒見がいい。

『おい、管理人。これからはお前が相談に乗ってやれ』

 オオムカデンダルはそう言って管理人に丸投げした。
面倒見がいいと言ったのは取り消そう。

『判りました』

 管理人が応答を引き継いだ。

『レオさん。どうなさりたいのですか?』

「ヴァンパイアは今、霧に姿を変えている。見ることも、攻撃することも出来ないんだ」

 俺は簡単に説明した。

『判りました。では電子頭脳に直接データを転送します』

 電子頭脳?
何のことだ。
そう思った瞬間。
頭の中に様々なことが思い浮かぶ。

 なんだこれは。

 今まで聞いた事もない原理や知識や考え方が、昔から知っていた事のように頭に思い浮かぶのだ。
自分の体に関する情報まで盛り込まれている。

『転送終了です』

 管理人がまるで『大したことはしていません』とでも言うように淡々と言った。

 俺は新たに身に付けた知識を応用する事にした。
オオムカデンダルは、おそらくそれを俺にやらせようとしているのではないか。

「賢者さま」

 俺はサルバスに向かって呼び掛けた。

「なんだね」

「辺りを寒く出来ますか?それもうんと寒く」

 サルバスは一瞬沈黙した。
俺の意図が判らないのだろう。

「……出来ると言ったら?」

「やってください。思いっきり寒く」

「どのくらいだ?」

「賢者さまの限界まで」

 俺の答えを聞いてサルバスは笑いだした。

「ワシの限界までか。はっはっはっはっ。面白い、やって見せよう」

サルバスはそう言って呪文を詠唱した。

「サモン・ジェネラルフロスト!」

 最後にサルバスがそう叫ぶと、突然空気がシンと冷たくなった。
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