見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二〇一

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 マズルは俺とサルバスの両方を交互に見た。
何かを考えているように見える。

「……判りました。ここへは定期的に通います」

 本気か。
俺はオオムカデンダルと蜻蛉洲を見た。
オオムカデンダルは特に興味無さそうに相変わらずクルクル回っている。
蜻蛉洲は部屋を出ていくところだった。

 どちらも興味ないのか。
ここの幹部連中は秘密結社の自覚が足りない。
俺が言うことでも無いが。

 俺は気になってフィエステリアームに尋ねた。

「……いいのか?」

「うん?なにが?」

 フィエステリアームが邪気の無い顔で俺を見る。
本当に何とも思っていないようだ。

「いや……無関係な人間をこんなに無防備に出入りさせて良いのか?」

 俺はハッキリと尋ねた。
とぼけているとは思わないが、適当にあしらわれているのではないか。

「いいんじゃないの。どうせ誰も何も出来やしないんだし」

 フィエステリアームはあっけらかんと答えた。

「心配要らないわ。管理は全部、管理人が屋敷からここまで面倒見てくれるもの。モンスターを倒しながらここまで来るのも一苦労。中に入るのも一苦労。中に入っても出来ることは何も無いの」

 令子がテーブルに頬杖をついて俺に言った。
相当な自信だが確かにそうだろうなと思った。
そこいらの上級ダンジョンなど、ここに辿り着くことに比べたら可愛いものだろう。

 なにせルームガーダーがこの四人では、絶対攻略不可能だと思える。

「じゃあ、俺はどうやって通えば……?」

 マズルが俺を見た。
そんな顔で俺を見るな。

「麓で叫びなよ。誰か手の空いてる者が迎えに行く」

 フィエステリアームが言った。
どんな親切な秘密結社だ。

「……判った。では自分はこれで帰ります。サルバス様をよろしく頼む」

 マズルはそう言って頭を下げた。
どこまでも律儀な男だ。

「麓まで送ろう」

 俺がマズルに言う。

「いや、さっき来たばかりだ。まだモンスターもそこまで集まっては居まい」

 マズルは俺の申し出を断ると、サッと出ていった。
まあ、彼にも色々思う所があるのだろう。
さしあたって、帝国の迎えに来た近衛兵にしこたま怒られるのが目に浮かぶ。

「オオムカデンダル」

 俺はオオムカデンダルに声を掛けた。

「なんだ」

「しばらく暇をもらいたい」

「なんで?」

 オオムカデンダルは回り続けている。

「俺は例の件を諦めた訳じゃない」

「あのアレか?プニプニ?」

「プニーフタールだ」

「そう、そのプニーフタール。別に構わんが宛もなく探し続けんの?何年かかるんだ」

 オオムカデンダルがかすかに笑った。
笑われたって関係ない。

「何年かかろうとも諦めはしない」

 そこで初めてオオムカデンダルは回るのをやめた。
そして俺を見た。
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