見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二〇五

「かはあっ!」

 息と同時に声が漏れる。
頭の半分が岩だらけの地面にめり込んだ。
首から背骨までダメージがある。

「んっふっふっ。これがDDTだ」

 そう言ってオオムカデンダルが素早く立ち上がった。
俺も地面から頭を引き抜いて立ち上がる。

「……なんだ……今のは」

 頭を掴まえて地面に叩きつける。
単純な技だ。

「だが、お前はかわせなかった。シンプルさ故に応用が利く。どんな場面からでも狙える」

 確かにこんな技を生身の人間が食らったら、ひとたまりもあるまい。

「おらっ!もういっちょ!まだまだ行くぞ!」

 オオムカデンダルがいつにも増してやる気を出している。
さっき『俺の好きなプロレス』とか言っていたな。
コイツ、さては楽しんでいるだけだろ。

 それから夜まで俺はみっちりと『プロレス』なるものを教え込まれた。
無敵の肉体を得ても相手が同じ条件のオオムカデンダルでは意味がない。
キッチリとダメージは蓄積される。

 くそ……ムチャクチャしやがって。

「まあ、この位やれば十分だろ。生身ならこうはいかない」

 オオムカデンダルは満足そうに言った。
だが、確かに何度も食らって覚えるのにこの肉体はうってつけだ。
何ヵ月も掛かるような特訓も、この肉体なら半日もあれば習得できる。
相手がオオムカデンダルでさえなければ、よりパーフェクトだ。

「も……もういいか?明日には……出発したいんだが……」

 俺はボロボロになりながら息も絶え絶えで話した。

「おう、いいとも。なんか面白いことがあったら連絡しろよ」

「お……面白いことって……?」

「なんでもだ。判るだろ?」

 判るが、判りたくない。
要はトラブルって事だ。
好奇心旺盛だとは聞いていたが、いささか異常なレベルだろ。
世にこんなにもトラブル好きが他に居るだろうか。

「なるべくなら……お、面白いことには出会いたくないんだが……」

「なに言ってんだ。お前を旅立たせる理由はそれしかないだろ?」

 隠しもしないのか。

「この世界は俺が思っていたよりも面白い。こんな事ならもっと早く世に出るべきだった」

 俺はアンタらを世に引き戻した事を後悔している。

 だが、彼らに出会わなければプニーフタールの事も判らなかったし、あの時点でみんな死んでいた。

 人生なんて判らんもんだな。

「俺は……プニーフタールを追うだけだ」

「判ってるよ。お前にゃ悪いが、それも俺の面白いことだ」

 そう言うとオオムカデンダルがへへっと笑った。
ムカつく所の筈だが、彼が言うと妙に納得してしまう。
これも彼の性格が成せるわざか。
そもそもムカついた所で、もう怒る気力もない程に俺は疲れきっていた。
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