見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二〇八

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「倒すとはまた大きく出たな」

 そう言いつつもサルバスの表情は明るかった。
オオムカデンダルの言葉を楽しんでいる風だ。

「俺は出来ないことは言わない。倒せるから言ったまでだ」

 その自信が本物なのは知っているが、どうして見たこともない邪神を倒せると断言できるのか疑問だ。
そう言うのを根拠のない自信と言うのだ。

 オオムカデンダルが俺の顔を見た。
何故かギクッとする。

「お前、信じてないだろ」

 アンタは預言者か。

「倒せるんだよ。実態が伴うなら必ず倒せる。当然だ」

 オオムカデンダルは胸を張った。
実態があるかどうかも含めて誰にも判らないんだが。

「じゃあ実態が無かったら?」

 サルバスが尋ねた。
当然の疑問だが余計な事は言わないで欲しい。

「それでも倒せるさ。方法は必ずあるんだ。それが実行可能かどうかの違いしかない」

「実行出来なければ倒せないなら、倒せない可能性もある訳か」

 サルバスが少しガッカリしたように見えた。

「いや、倒せる」

 オオムカデンダルは退かない。

「例えば、『倒せない』とはどういう状態なら倒せないとするんだ?」

 オオムカデンダルの質問に、サルバスが面白いと言わんばかりに身を乗り出す。
こういう議論が好きなのだろう。
賢者だしな。

「うーむ。実態の無い影のような存在か……はたまた風や火や、水もそうだな」

「そんな物が意思を持って活動しているだけでも相当な非常識だが面白い。火は消せる。水なら凍らせるし、風なら気圧の変化で操れる。それ以外でも必ず何かしら対策は立てられる」

「火と言ってもそんなに簡単には消せんし、水も簡単には凍らせんだろうよ。なにせ邪神だしの」

「消えるんだよ。酸素が無ければ火は消える。これは絶対だ。もし消えないとすれば代わりに燃焼する火薬のような物があるときだけさ。だったらそれをどうにかすればいい」

 サルバスが目を細める。

「サンソ……?済まん。判らん。教えてくれんか」

 俺は慌てて間に入った。
これ以上話を引き伸ばされてたまるか。

「とにかく、俺はプニーフタールを追う。何か有用な情報が判ったら教えて欲しい。それだけだ」

 俺はそれだけ言うと踵を返した。
早く出発しないとまた明日になってしまう。

「ああ、いいとも。お前も何か面白い事があったらちゃんと報告するんだぞ」

 オオムカデンダルが念を押してきた。

「面白い事があったらな」

 俺はそれだけ言うと急いで拠点を出た。
余計なことを言うとやぶ蛇になりかねない。

 さて、何処へ行くか。
町に戻るのは気が引けた。
警備隊の連中に会うと面倒だ。

「だが、最寄りの町だしな……」

 取り敢えず斡旋所だけ覗く事にしよう。
俺は一路、町へと向かった。
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