見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二二一

 俺は上空を旋回すると森の入り口付近まで戻った。
ボードを下ろして地上に降りる。
迎え撃つならこの辺りか。
森から出てきて、道が開ける。
一本道だが、辺りは草原だ。
見通しはいい。

「ここで迎え撃つ」

「判ったわ」

 令子の声が聞こえた。
おそらく、令子もそろそろ来る筈だ。

 ヤツらの進行速度はあまり速くない。
人間が歩くよりも若干遅い。
この速度なら村へは今晩真夜中と言うところだろう。
時間的な余裕はある。

 「蜻蛉洲。治せるんだろ?殺さなくてもいいんだよな?」

 俺は蜻蛉洲に尋ねた。

「何を言っている。殺せ」

 俺は耳を疑った。
となり村の人間を全て殺さなければならないのか。

「え……治せるんじゃないのか?」

「治せるぞ。お前の妹も、このとなりのうるさいオッサンも治せる」

「じゃあ……」

「一、二の三で全員治せる訳ないだろ。それなりに時間がいる。その間、お前そいつらそこで止められるのか?」

 ……無理だ。
この大群を足止めなど出来ない。

「じゃあ、殺すしかあるまい。お前は自分の村を救いたいのか、となり村の奴らを救いたいのか、どっちなんだ?」

「どちらかしか選べないのか……?」

「当たり前だろ。僕はどちらでも構わん。好きな方を選ぶがいい」

 俺はこの土壇場で狼狽した。
甘かった。

「そうね」

 令子が追い付いた。
当然息切れひとつしていない。

「二兎を追う者、一兎をも獲ず」

 なんだそれは。

「私の国の諺よ」

 そう言って令子は微かに笑った。

「選択できる時は選択しておきなさい。選ぶ権利など無い事の方が人生には多いんだから」

 見た目は俺とそう変わらんのに、含蓄に富むな。
俺は令子を見つめた。

「うふふ。ありがとう。でも私君よりずっと年上なのよ」

「え?」

「だって私、歳をとらないもの」

 そう言って令子は笑った。
言われてみればそうだ。
オオムカデンダルも何十年も緑の谷に居ると言っていた。

 じゃあ、彼らはいったい幾つなんだ?

「ほら、先頭がお見えになったわよ」

 令子の声で我に返る。
見ると、一人がフラフラと森から現れた。

 ついに来た。
殺せるのか。
俺に。

 令子は横目で俺を見た。

「私が先に戯れているからアナタはそこで考えてなさい」

 え?

「でもいつまでもは引き止められないわよ」

 そう言って令子は変身した。

 貝だ。
見るからに貝だと一目で判る。
黒くて金属のような光沢を放っている。
これが生物でありながら金属質を有すると言う貝なのか。

「じゃあね」

 令子はバイバイのポーズで軽く指先だけをヒラヒラさせると、そのまま森に向かって歩きだした。
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