見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二二六

 蜻蛉洲は持ってきた金属製の鞄を開けた。
そして中から何やら取り出すと、男に近寄った。

「腕を出せ」

 男は言われるままに腕を出す。
蜻蛉洲は男の腕を取ると、これまた金属製の小さな筒を腕に押し当てた。

 筒に付いた小さな窓から血が見える。
血を抜いているのか。

「何をしている」

「血液を採取している。村長、悪いが貴方のも頂きたい」

 村長が驚いた。

「ワ、ワシも?」

「この村の状況を知るためのサンプルだ。村長が代表だ」

 蜻蛉洲はそう言うと、新しい筒を取り出した。
男の分はもう終わったらしい。
村長は気が進まないと言う風だったが、村の代表だと言われては仕方がなかった。
村長とは本当に割りに合わない肩書きだ。

 蜻蛉洲は同じように村長からも血液を採取した。

「それをどうするんだ?」

「決まっている。調べるんだよ」

 血を調べるのか。
相変わらず訳が判らない。
そんな事はお構いなしに、蜻蛉洲は二つの筒を窓から覗きこんだ。

「何か見えるのか?」

 さっきから俺は質問ばかりしている。

「普通は見えないな。専用の顕微鏡や機械がいるが、俺の眼はそれら全てを兼ねているからね」

 どこか得意気に蜻蛉洲が答えた。

「ふむ」

 やがて蜻蛉洲が頷く。
何か判ったのか。

「村長の血液はこの村の代表だと言っただろう。この村の人間はおそらくほぼ全員、ゾンビーになる可能性を持っている」

 !

 俺も村長も衝撃を受けた。

「なんだって!」

「攻撃性の高い、見たことのないウイルスがウヨウヨしている。実に興味深い」

 興味を深めている場合か。

「当然、この男もウイルスを持っている。だが、彼のウイルスは攻撃性がほとんど認められない」

 つまり、何なんだ。
判るように言ってくれ。

「ウイルスが細胞に入り込んで肉体を侵食していく。そしてゾンビーになる。簡単に言えばそう言う理屈だ」

 この男のウイルスは大人しいから侵食しないと言うことか。

「その通りだ。ウイルスに感染しているのにゾンビーにはならない。何故か。それはこの男がキャリアーだからだ」

「キャリアー?」

「病気の発信元だ。この男がゾンビーウイルスを持ち込んで、ばらまいている。風邪と同じだ。感染るんだよ」

 俺たちは絶句した。

「何故、彼が怪しいと思ったんだ?」

 俺は尋ねた。

「村長と比べて体温が普通だったからな。ゾンビーはほとんど生命活動をしていない。放っておけばそのまま死ぬ。村長の体温は二十二度三分しかない。普通なら死んでいる」

 そう言って蜻蛉洲は笑った。
笑い事か。

「どうりで最近冷え込むなと思っていたんだが……」

 村長が呟いた。

「違う。貴方の体温が下がっているだけだ」

 蜻蛉洲が言った。
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