見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二二七

「じゃあ何故この男のウイルスだけ大人しいんだ?」

 俺は蜻蛉洲に尋ねた。

「それは本格的に調べなければ判らない。想像するにおそらく、彼は何らかの抗体を持っている。先天性なのか、そう言う処置を受けたのかは判らないが」

 男は今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「お、俺のせいなのか?俺はいったいどうなる……どうすれば……?」

 蜻蛉洲は冷静そのものだ。
冷たささえ感じる。

「そんな事は自分で決めたまえ。幸いアンタは発症しないようだからな。死ぬことはあるまい」

「そ、そんな……」

 男がすがるような目で蜻蛉洲を見る。

「さすがに冷た過ぎないか。何とかしてやれないのか?」

「なぜ?」

「なぜって……」

 俺は言葉に詰まった。
何故かなんて考えたことも無いが、こう言う時にはそう思うのが普通ではないのか。

 そんなに自信満々に言われたら、俺の方が間違っているような気さえする。

「お前、誰でもかれでも救えるなんて思うなよ。人間なんて出来ることは限られているんだ。神にでもなったつもりか?」

 蜻蛉洲がグサグサと胸に突き刺さる言葉を投げ掛けてくる。
だが俺たちから見れば、アンタたちは十分神にも等しい。
中身は悪魔かもしれないが……

「じゃあどうして俺の妹は救ってくれたんだ。研究の為とか言うなよ」

 俺は蜻蛉洲に食い下がった。
蜻蛉洲は冷たい目で俺を見る。

「……お前は馬鹿なのか」

 なに。

「身内と他人は違うだろ。お前はもう、身内だ。組織の人間だ。僕たちは内と外とで境界線を引いている」

 判りやすいが極端すぎやしないか。

「人と言うのは狡くて薄情な物だ。都合の良い時だけすがってくる。しかし、自分の都合が済めば知らん顔だ。僕たちは慈善事業をしているのではない」

 彼らの言うことも判らなくはないが、彼らの理想や信念が何なのかはよく判らない。
帝国の赤子を助けたときには、オオムカデンダルは相当な怒りを露にしていた。
今一つ整合性が取れてないように思える。

「……赤ん坊は別だ。まだ何の主義主張もあるまい」

「あの……」

 村長がおそるおそる会話に入ってきた。

「難しい話は判らんが、敵か味方かの話をされているので?」

 事はそう単純ではないが、全く見当違いと言うわけでもない。

「では、この村の者を救って下さったら、我々はあなた様に忠誠を誓います。お願いです、どうかこの村を救って下さい」

 村長は地面に膝をついて懇願した。

「村長……」

 村長の気持ちは痛いほど判る。
だが、オオムカデンダルの顔を思い出した時、それはどうかなとも思った。

「……」

 蜻蛉洲がじっと村長を見下ろしている。
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