227 / 826
二二七
「じゃあ何故この男のウイルスだけ大人しいんだ?」
俺は蜻蛉洲に尋ねた。
「それは本格的に調べなければ判らない。想像するにおそらく、彼は何らかの抗体を持っている。先天性なのか、そう言う処置を受けたのかは判らないが」
男は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「お、俺のせいなのか?俺はいったいどうなる……どうすれば……?」
蜻蛉洲は冷静そのものだ。
冷たささえ感じる。
「そんな事は自分で決めたまえ。幸いアンタは発症しないようだからな。死ぬことはあるまい」
「そ、そんな……」
男がすがるような目で蜻蛉洲を見る。
「さすがに冷た過ぎないか。何とかしてやれないのか?」
「なぜ?」
「なぜって……」
俺は言葉に詰まった。
何故かなんて考えたことも無いが、こう言う時にはそう思うのが普通ではないのか。
そんなに自信満々に言われたら、俺の方が間違っているような気さえする。
「お前、誰でもかれでも救えるなんて思うなよ。人間なんて出来ることは限られているんだ。神にでもなったつもりか?」
蜻蛉洲がグサグサと胸に突き刺さる言葉を投げ掛けてくる。
だが俺たちから見れば、アンタたちは十分神にも等しい。
中身は悪魔かもしれないが……
「じゃあどうして俺の妹は救ってくれたんだ。研究の為とか言うなよ」
俺は蜻蛉洲に食い下がった。
蜻蛉洲は冷たい目で俺を見る。
「……お前は馬鹿なのか」
なに。
「身内と他人は違うだろ。お前はもう、身内だ。組織の人間だ。僕たちは内と外とで境界線を引いている」
判りやすいが極端すぎやしないか。
「人と言うのは狡くて薄情な物だ。都合の良い時だけすがってくる。しかし、自分の都合が済めば知らん顔だ。僕たちは慈善事業をしているのではない」
彼らの言うことも判らなくはないが、彼らの理想や信念が何なのかはよく判らない。
帝国の赤子を助けたときには、オオムカデンダルは相当な怒りを露にしていた。
今一つ整合性が取れてないように思える。
「……赤ん坊は別だ。まだ何の主義主張もあるまい」
「あの……」
村長がおそるおそる会話に入ってきた。
「難しい話は判らんが、敵か味方かの話をされているので?」
事はそう単純ではないが、全く見当違いと言うわけでもない。
「では、この村の者を救って下さったら、我々はあなた様に忠誠を誓います。お願いです、どうかこの村を救って下さい」
村長は地面に膝をついて懇願した。
「村長……」
村長の気持ちは痛いほど判る。
だが、オオムカデンダルの顔を思い出した時、それはどうかなとも思った。
「……」
蜻蛉洲がじっと村長を見下ろしている。
俺は蜻蛉洲に尋ねた。
「それは本格的に調べなければ判らない。想像するにおそらく、彼は何らかの抗体を持っている。先天性なのか、そう言う処置を受けたのかは判らないが」
男は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「お、俺のせいなのか?俺はいったいどうなる……どうすれば……?」
蜻蛉洲は冷静そのものだ。
冷たささえ感じる。
「そんな事は自分で決めたまえ。幸いアンタは発症しないようだからな。死ぬことはあるまい」
「そ、そんな……」
男がすがるような目で蜻蛉洲を見る。
「さすがに冷た過ぎないか。何とかしてやれないのか?」
「なぜ?」
「なぜって……」
俺は言葉に詰まった。
何故かなんて考えたことも無いが、こう言う時にはそう思うのが普通ではないのか。
そんなに自信満々に言われたら、俺の方が間違っているような気さえする。
「お前、誰でもかれでも救えるなんて思うなよ。人間なんて出来ることは限られているんだ。神にでもなったつもりか?」
蜻蛉洲がグサグサと胸に突き刺さる言葉を投げ掛けてくる。
だが俺たちから見れば、アンタたちは十分神にも等しい。
中身は悪魔かもしれないが……
「じゃあどうして俺の妹は救ってくれたんだ。研究の為とか言うなよ」
俺は蜻蛉洲に食い下がった。
蜻蛉洲は冷たい目で俺を見る。
「……お前は馬鹿なのか」
なに。
「身内と他人は違うだろ。お前はもう、身内だ。組織の人間だ。僕たちは内と外とで境界線を引いている」
判りやすいが極端すぎやしないか。
「人と言うのは狡くて薄情な物だ。都合の良い時だけすがってくる。しかし、自分の都合が済めば知らん顔だ。僕たちは慈善事業をしているのではない」
彼らの言うことも判らなくはないが、彼らの理想や信念が何なのかはよく判らない。
帝国の赤子を助けたときには、オオムカデンダルは相当な怒りを露にしていた。
今一つ整合性が取れてないように思える。
「……赤ん坊は別だ。まだ何の主義主張もあるまい」
「あの……」
村長がおそるおそる会話に入ってきた。
「難しい話は判らんが、敵か味方かの話をされているので?」
事はそう単純ではないが、全く見当違いと言うわけでもない。
「では、この村の者を救って下さったら、我々はあなた様に忠誠を誓います。お願いです、どうかこの村を救って下さい」
村長は地面に膝をついて懇願した。
「村長……」
村長の気持ちは痛いほど判る。
だが、オオムカデンダルの顔を思い出した時、それはどうかなとも思った。
「……」
蜻蛉洲がじっと村長を見下ろしている。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
親世代ではなかったのですか?
立木
恋愛
親世代が「乙女ゲーム時代」だったと思っていたら、子世代も「乙女ゲーム」だった。
※乙ゲー転生ですが要素は薄いです。
※別サイトにも投稿。
※短編を纏めました。
元婚約者だったお兄様が後悔したと私に言ってくるのですが…
クロユキ
恋愛
親同士が親友だったと将来お互い結婚をして子供が生まれたら婚約を結ぶ約束をした。
お互い家庭を持ち子供が生まれたが一家族の子供は遅い出産だったが歳が離れていても関係ないとお互いの家族は息子と娘に婚約を結ばせた。
ジョルジュ十歳、オリビア0歳で親同士が決めた婚約をした。
誤字脱字があります。
更新が不定期ですがよろしくお願いします。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
居酒屋の看板娘でしたが、歌の治癒魔法が覚醒して王女に戻されました〜幼い頃に出会った側近様と紡ぐ恋〜
丸顔ちゃん。
恋愛
生まれてすぐに誘拐され、死んだとされた王女──
その赤子は、実は平民街にひっそりと置き去りにされていた。
病弱な父に拾われ、居酒屋の看板娘として育ったミリア。
白い小花を髪に挿し、歌うことが大好きな少女。
自分の歌に“治癒の力”が宿っていることなど知らずに、
父と平民仲間に囲まれ、穏やかな日々を送っていた。
ある日、市場にお忍びで来ていた皇太子とその側近が、ミリアの歌声を耳にする。
皇太子は“王族にしかない魔力の波動”を感じ、
側近は幼い頃の祭りで出会った白い小花の少女を思い出し、胸がざわつく。
その直後、父が危篤に。
泣きながら歌ったミリアの声は奇跡を起こし、治癒魔法が覚醒する。
「どうして平民の私に魔力が……?」
やがて明かされる真実──
ミリアこそ、行方不明になっていた王女その人だった。
王宮に迎えられ、王女としての生活が始まる。
不安と戸惑いの中、そばにいてくれるのは、
幼い頃に一目惚れし、今も変わらず彼女を見つめる皇太子の側近。
「今度こそ、君を見失わない」
歌姫王女として成長していくミリアと、
彼女を支え続ける側近の、優しくて温かい恋の物語。