228 / 826
二二八
しおりを挟む
「村長。そんなに簡単に忠誠を誓って良いのか?さっきも言ったが、僕たちは慈善事業をしているのではない。裏切り者にはそれ相応の対価を支払ってもらうんだぞ?」
「それは帝国も同じこと。今と大して変わりません。いえ、帝国にはこの村のこの現状は救えますまい。私は何の力もありませんが、それでも村長です。何とぞこの村を」
村長は更に低く頭を下げた。
「村長……」
俺は村長の体を起こした。
「蜻蛉洲、頼む。俺からもお願いしたい」
俺は蜻蛉洲に頭を下げた。
「……」
蜻蛉洲は沈黙した。
沈黙の時間が長く感じる。
「……そこまで言うなら良いだろう。但し約束を違えたら、この村は消えると思ってもらおう」
蜻蛉洲は静かにそう言った。
如何に蜻蛉洲と言えど、一人で決定する事に何かしら抵抗があったのかもしれない。
「ありがとうございます!」
男も慌てて膝をついた。
「ありがとうございます!」
「……ところで令子が遅いな。何をしている」
言われてみれば確かに遅い。
もうとっくに戻ってきてても良い頃だ。
「令子、何をしている」
蜻蛉洲が令子を呼び出す。
「あら、ごめんなさい。ちょっと取り込み中なのよ」
取り込み中?
何をしているんだ。
「……戦闘中か」
蜻蛉洲が尋ねた。
「まあね」
まだ戦闘中なのか。
残りわずかだったのだが、実はまだ居たのか。
「レオ、見てきてくれ。必要なら手を貸してやってくれ」
「わかった」
俺は三度ボードに飛び乗ると、また令子の元へと折り返した。
それにしても、俺が手を貸す事などあるのだろうか。
戦闘は嫌いだと言っていたが、それでも令子に勝てる奴など居ないだろう。
「なんだ、ありゃあ」
俺は上空から見て呟いた。
竜巻だ。
巨大な竜巻が立ち上っている。
結構距離があるが、もうここまで強い風が吹き荒れている。
「風が強いなと思っていたら……」
まさか、竜巻だとは。
村までは数キロ。
これ以上接近するようだとかなりまずい。
令子は。
俺は令子を探した。
「令子さん、居るかい?」
俺は令子に問いかけた。
「来てくれたの?良かったのに」
令子の声が風の音で聞き取りにくい。
いったいどこに居るのか。
俺はよく目を凝らした。
「居た……」
竜巻の中に人影がある。
あれだ。
何で竜巻の中心に居るんだ?
そろそろボードの制御が難しくなってきた。
俺は地上に降りると自力で走った。
竜巻に近づくにつれて、様々な物が飛んでいるのが判る。
石や木の葉は言うに及ばず、大木が一本丸々飛んでいる。
根こそぎ引き抜かれたのか。
そんなものが何本も渦を巻き、上空へと舞い上がっていく。
令子はその中でじっと立っていた。
「それは帝国も同じこと。今と大して変わりません。いえ、帝国にはこの村のこの現状は救えますまい。私は何の力もありませんが、それでも村長です。何とぞこの村を」
村長は更に低く頭を下げた。
「村長……」
俺は村長の体を起こした。
「蜻蛉洲、頼む。俺からもお願いしたい」
俺は蜻蛉洲に頭を下げた。
「……」
蜻蛉洲は沈黙した。
沈黙の時間が長く感じる。
「……そこまで言うなら良いだろう。但し約束を違えたら、この村は消えると思ってもらおう」
蜻蛉洲は静かにそう言った。
如何に蜻蛉洲と言えど、一人で決定する事に何かしら抵抗があったのかもしれない。
「ありがとうございます!」
男も慌てて膝をついた。
「ありがとうございます!」
「……ところで令子が遅いな。何をしている」
言われてみれば確かに遅い。
もうとっくに戻ってきてても良い頃だ。
「令子、何をしている」
蜻蛉洲が令子を呼び出す。
「あら、ごめんなさい。ちょっと取り込み中なのよ」
取り込み中?
何をしているんだ。
「……戦闘中か」
蜻蛉洲が尋ねた。
「まあね」
まだ戦闘中なのか。
残りわずかだったのだが、実はまだ居たのか。
「レオ、見てきてくれ。必要なら手を貸してやってくれ」
「わかった」
俺は三度ボードに飛び乗ると、また令子の元へと折り返した。
それにしても、俺が手を貸す事などあるのだろうか。
戦闘は嫌いだと言っていたが、それでも令子に勝てる奴など居ないだろう。
「なんだ、ありゃあ」
俺は上空から見て呟いた。
竜巻だ。
巨大な竜巻が立ち上っている。
結構距離があるが、もうここまで強い風が吹き荒れている。
「風が強いなと思っていたら……」
まさか、竜巻だとは。
村までは数キロ。
これ以上接近するようだとかなりまずい。
令子は。
俺は令子を探した。
「令子さん、居るかい?」
俺は令子に問いかけた。
「来てくれたの?良かったのに」
令子の声が風の音で聞き取りにくい。
いったいどこに居るのか。
俺はよく目を凝らした。
「居た……」
竜巻の中に人影がある。
あれだ。
何で竜巻の中心に居るんだ?
そろそろボードの制御が難しくなってきた。
俺は地上に降りると自力で走った。
竜巻に近づくにつれて、様々な物が飛んでいるのが判る。
石や木の葉は言うに及ばず、大木が一本丸々飛んでいる。
根こそぎ引き抜かれたのか。
そんなものが何本も渦を巻き、上空へと舞い上がっていく。
令子はその中でじっと立っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
31
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる