見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
254 / 826

二五四

「まあ、いいさ。顔のことは言われ慣れてるよ」

 カルタスはそう言って小さくため息を吐いた。

「カルタスはね、元傭兵なのよ」

 傭兵か。
なるほど、そっちの印象は見た目通りだ。
なぜ花屋なんかしてるのか。
傭兵より儲かる花屋とは何だ?
花に武器を紛れ込ませて密輸でもしてんのか。

「してねえよ」

 カルタスが強く否定した。

「普通の花屋だよ」

 その花屋が昼間っから店を放って服屋に何の用だ。

「コイツとは昔、冒険者だった頃の腐れ縁だ」

 カルタスがオレコを親指で指した。

「……昔の話よ。マズルとはパーティーを組んでたの。でもせっかくブラックナイトクラスに昇級したのに、突然『警備隊に入る』とか言い出しちゃって。ホント、訳判んない」

 オレコが首をすくめる。
マズルとパーティーを組んでいたのか。

「アンタもブラックナイトに昇級したのか」

 俺が尋ねるとオレコはウインクで返した。

「そうよ。私はレンジャー、マズルは剣士。カルタスは傭兵として何度もモンスター討伐作戦で顔を会わせたのよ」

 そう言うことか。
聞いてみないと判らない物だ。
元レンジャーが情報屋とは、適材適所な感じもする。

「マズルが辞めても冒険者を続ければ良かったんじゃないのか?」

 オレコが首を横に振った。

「そうなんだけどね、マズルとは馬が合ったのよ。他の冒険者とパーティー組むって考えた時、なんかつまんないなって思っちゃって」

 俺は誰とでもパーティーを組んでいた。
その気持ちはまだ判らない。
ただ一人、レンジャーの彼女を除いては。
彼女が冒険者を辞めると言ったら、俺は一緒に辞める気になれるのだろうか。

「ま、おしゃべりはこのくらいにして、ワタシは行ってくるわ」

 オレコは今度こそ店を出て行った。

「しゃーねぇなあ。じゃあ、アンタで良いや」

 カルタスが頭を掻きながら俺の背中を押した。

「お、おい。何の話だ?」

 俺は驚いてカルタスの顔を見た。
顔を見て二度驚きそうになる。
どう見ても何人か殺してる顔だ。
傭兵上がりなら当然何人か殺してるんだろうが。

「人は殺してねーよ。モンスター専門だ」

 カルタスが笑った。
本当か?
内心まだ疑っていた。

「そんな事より、どこへ行こうってんだ?」

 俺はカルタスに尋ねた。

「来てくれりゃ判る」

 カルタスはそう言うばかりで答えない。
なんだ?トラブルか?
しかしトラブルで他人の助けが要るような男ではあるまい。
なんなら相手を殺して埋めてしまいそうだ。
まさか、埋める手伝いか?

「お前、ホントいい加減にしろよ」

 カルタスが苦笑いする。
怒らないのを見ると、意外といいヤツなのかも知れないなと思った。

 大通り沿いにしばらく歩くと、花屋が見えてきた。
この店か?

「そうだ」

 カルタスはそう言って店の中へと俺を押し込んだ。
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

⚪︎
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

最後に笑うのは

りのりん
恋愛
『だって、姉妹でしょ お姉様〰︎』 ずるい 私の方が可愛いでしょ 性格も良いし 高貴だし お姉様に負ける所なんて ありませんわ 『妹?私に妹なんていませんよ』

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。