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二六四
「そうだ」
カルタスが鼻で笑う。
「信じない訳じゃないが、トラゴスの件とは無関係だろ。何でもかんでも結びつけ過ぎだ」
「そうかもしれない。だが、そうではないかもしれない。判らない以上どんな可能性も潰しておく必要がある」
俺は淡々と答えた。
別にカルタスの同意など求めてはいないのだ。
どんな状況だろうと、相手が何であろうと、俺は自分のやり方も考え方も変える気はない。
トラゴスは、皿に乗っている分の野菜を全て食べ終えて答えた。
「最初、山羊と人間の間の形になりました。でもこれでは会いに行けないと思って、人間になりたいと強く念じるとこの姿になれました」
まるで夢物語を聞いているような気分だった。
だが、トラゴスは真面目に話している以上、本当の出来事なのだろう。
だが、何故その何者かは願いを叶える気になったのだろうか。
こう言っては何だが、山羊の願いを叶える意味はあるのか。
「望みを叶えたら帰ってくるように言われています。でも、もうホンの少しだけ一緒に居たくて……」
なるほど。
もともと長居するつもりではなかった訳か。
すぐに帰りたがらなかった理由も判る気がする。
「帰ってくるようにとは、どういう意味か判るのか?」
俺はトラゴスに尋ねた。
「詳しくは判りませんが、私には役目があるのだと。それをやってもらう代わりに願いを叶えてやると」
交換条件だと?
いよいよ胡散臭くなってきたな。
その役目が何か、興味がある。
もしロクでもない目的だったら、邪魔してやる必要がある。
「トラゴス」
「はい?」
「お前が帰る時、俺も一緒に行こう」
「え?」
「俺もその何者かに会ってみたい」
偶然の出会いだったが、ひょっとすると大物が釣れる可能性が出てきた。
「おいおい。なんだよ、お前らだけ盛り上がりやがって」
カルタスが口をとがらせた。
「別に盛り上がってないが」
「俺に会いに来てくれたのに、何でお前と連れ立つ必要があるんだよ」
どこに嫉妬してるんだ、この犯罪者顔は。
「相手は山羊なんだが」
トラゴスが、こくこくと頷いた。
「いくら見た目が美人でも、俺は山羊まで守備範囲に収めるつもりはない」
デリカシーのない発言かもしれないが事実だから仕方がない。
「ではカルタス様も一緒に行きましょう!」
トラゴスが笑顔で提案した。
この笑顔。
眩しすぎる。
心の底から出た言葉だ。
一点の邪気もない。
「個人事業主は忙しいんだ。無理を言っては駄目だ」
俺はトラゴスを止めた。
「いいや、俺も行く」
どこまで本気だこの男は。
さっきまで追い返せと言っていたのは何だったのか。
男の嫉妬は見苦しい。
カルタスが鼻で笑う。
「信じない訳じゃないが、トラゴスの件とは無関係だろ。何でもかんでも結びつけ過ぎだ」
「そうかもしれない。だが、そうではないかもしれない。判らない以上どんな可能性も潰しておく必要がある」
俺は淡々と答えた。
別にカルタスの同意など求めてはいないのだ。
どんな状況だろうと、相手が何であろうと、俺は自分のやり方も考え方も変える気はない。
トラゴスは、皿に乗っている分の野菜を全て食べ終えて答えた。
「最初、山羊と人間の間の形になりました。でもこれでは会いに行けないと思って、人間になりたいと強く念じるとこの姿になれました」
まるで夢物語を聞いているような気分だった。
だが、トラゴスは真面目に話している以上、本当の出来事なのだろう。
だが、何故その何者かは願いを叶える気になったのだろうか。
こう言っては何だが、山羊の願いを叶える意味はあるのか。
「望みを叶えたら帰ってくるように言われています。でも、もうホンの少しだけ一緒に居たくて……」
なるほど。
もともと長居するつもりではなかった訳か。
すぐに帰りたがらなかった理由も判る気がする。
「帰ってくるようにとは、どういう意味か判るのか?」
俺はトラゴスに尋ねた。
「詳しくは判りませんが、私には役目があるのだと。それをやってもらう代わりに願いを叶えてやると」
交換条件だと?
いよいよ胡散臭くなってきたな。
その役目が何か、興味がある。
もしロクでもない目的だったら、邪魔してやる必要がある。
「トラゴス」
「はい?」
「お前が帰る時、俺も一緒に行こう」
「え?」
「俺もその何者かに会ってみたい」
偶然の出会いだったが、ひょっとすると大物が釣れる可能性が出てきた。
「おいおい。なんだよ、お前らだけ盛り上がりやがって」
カルタスが口をとがらせた。
「別に盛り上がってないが」
「俺に会いに来てくれたのに、何でお前と連れ立つ必要があるんだよ」
どこに嫉妬してるんだ、この犯罪者顔は。
「相手は山羊なんだが」
トラゴスが、こくこくと頷いた。
「いくら見た目が美人でも、俺は山羊まで守備範囲に収めるつもりはない」
デリカシーのない発言かもしれないが事実だから仕方がない。
「ではカルタス様も一緒に行きましょう!」
トラゴスが笑顔で提案した。
この笑顔。
眩しすぎる。
心の底から出た言葉だ。
一点の邪気もない。
「個人事業主は忙しいんだ。無理を言っては駄目だ」
俺はトラゴスを止めた。
「いいや、俺も行く」
どこまで本気だこの男は。
さっきまで追い返せと言っていたのは何だったのか。
男の嫉妬は見苦しい。
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