見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二六九

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 こいつら、どうあっても付いてくるつもりか。
なら、後は知らん。
俺は警告だけはしたのだ。
その後の事は自己責任だ。

「……勝手にするがいい。俺は一切、面倒も責任も関知しないからな。足手まといは置いていく」

 俺はなるべく冷たく突き放した。
こんな事で諦めはしないだろうが、自分のせいで誰かが死んだら居たたまれない。

「ああ、それでいい」

 カルタスが明るく言い放った。
オレコも意思は変わらないようだった。
ちぇっ、好きにしろ。

 俺は無視して歩き出した。
その後ろをカルタス、トラゴス、オレコの順に付いてくる。

 ここから帝国までは歩いて七日くらいか。
俺が走れば半日で着くだろうし、ボードに乗れば更にその半分くらいで着く筈だ。
ここからミスリル銀山の拠点までと、ほぼ同じくらいの距離だ。

 走って振り切ろうかとも考えたが、やめた。
何故か。

 オオムカデンダルが『そいつらを連れて行け』と命令してきたからだ。
さっきの会話の後、オオムカデンダルがそれを突然言い出した。
当然、それは俺にしか聞こえない。
頭の中に直接聞こえてくるのだ。
『通信』と言うらしい。

 どういう風の吹き回しかは知らない。
オオムカデンダルの言うことはいつも突拍子も無いことばかりだ。
思い付きで言ってる節もあるが、考えるだけ無駄である。
どうせ言い出したら聞かないし、上官の命令には従うしか選択肢はない。

 それにしても、いつも会話を聞いているのか。
仕事熱心なのか、暇なのか。
俺は後者だと思う。

 カルタスやオレコはともかく、トラゴスは歩き通しで疲れるだろうと思ったが、どうもその心配は無さそうだった。
さすがは元山羊だ。

 そうして宿場に泊まれない時は野宿をしながら、六日目の朝に帝国に着いた。
予定よりもずっと早い。
トラゴスたちが予想よりもタフだったのが大きい。

 帝国の門の外には日中、衛兵が立っている。
この衛兵たちが、入国者を個別に審査するのだ。
帝国に限らず大きな国ならどこでもやっている。
ただ帝国のソレは他よりも多少審査が厳しい。

 俺は冒険者の証を提示した。
冒険者の証しは斡旋所が身分を保証している公的な身分証明だ。
だから冒険者は、よほどの問題児か手配が出回るような悪党でもない限り問題にはならない。
同行者もそれがパーティーならば、リーダーが責任者と言う形で入国を許される。

 当然ここはパーティーを装う。
俺がリーダーという建前だ。

「おい」

 衛兵が俺を止めた。

「ミラーナイトのレオで間違いないな」

「ああ、そうだ」

 呼び止められるとは珍しいな。
今までそんな事は無かったんだが。

「こっちへ来い」

 衛兵は仲間を呼んで俺たちを取り囲んだ。
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