見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二七〇

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「なんだ?」

 俺は周りを一瞥して言った。
何かしら手配が出ているのか? 

 思い当たる節は……あるな。

 俺はミスリル銀山での一件を思い出していた。
帝国軍と戦闘があった時だ。
あのゴタゴタの中、たかが一冒険者の俺を覚えていたとは思わなかったが、向こうからすればホンの数人の秘密結社だ。
覚えるのはそう難しく無かったのかもしれない。

「お前が来たら連れてくるように達しが来ている。大人しく付いて来い」

 到着するなり早速か。
話が早くて助かると思うことにしよう。

 俺は後ろの連中を振り返った。
カルタスは笑っている。
オレコもとぼけた顔をしている。
トラゴスは……たぶん状況が判っていないな。

 俺たち四人を数十人体制で取り囲み、そのまま連れて行く。

「おい、俺たち相手にしちゃ物々し過ぎないか?」

 カルタスが嬉しそうに言った。

「何が嬉しいんだ?」

「別に?ただ何が起こるのか興味があるじゃねえか」

 そんなもんかね。
俺はちっとも楽しくないが。

 帝国領内は当然一つの国だ。
その中でも城壁に囲まれた内側は、いわゆる城下町と言うことになる。
中流以上の国民が住んでいる。
具体的には主に商人だ。

 外側は貧しいものや、農夫などの一次産業を生業とする者たち。
身分による差別的な事が特にあるわけでは無いようだが、単純に町中での農業や牧畜は無理があろう。

 前後左右をガッチリと固められたまま、真っ直ぐに城へと向かっている。
いきなり皇帝と謁見か。
さすがにそれは無いと思うが。

「ここへ入れ」

 城に向かうずいぶん手前で、道の途中にあった建物に入るように促された。

「なんだここは?」

「いいから、言われた通りにしろ」

 まあ、いざとなったら如何ようにしても脱出できる。
ここは様子を見るか。
俺は言われるままに建物へ足を踏み入れた。

 ガチャリ

 背後でドアが閉まる。
おそらく鍵も掛けられているし、外からも押さえられている。
カルタスもオレコも全く動じていないのはさすがだ。

 辺りを見回す。
窓は無い。
真ん中にテーブルが一つあって、その上に燭台がある。
その蝋燭が部屋をぼんやりと照らしていた。
他には何も無い。

「なんだこの部屋は?」

 カルタスが辺りを歩き回る。
動きが訓練を受けた兵士の動きだ。
少しも隙がない。
オレコも壁や床を確かめている。
さすがは元レンジャー、いや、ソルジャーか。

「ただの部屋ね。その割りに窓もないし、生活感ゼロだけど」

 部屋の奥に進むと、入り口以外唯一のドアがある。
奥に部屋があるのか。
俺はドアを開けた。
廊下があって突き当たりにまたドアがある。

 何かのアジトか。
おかしな造りだ。
少なくとも店舗や民家ではない。
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