見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
270 / 826

二七〇

「なんだ?」

 俺は周りを一瞥して言った。
何かしら手配が出ているのか? 

 思い当たる節は……あるな。

 俺はミスリル銀山での一件を思い出していた。
帝国軍と戦闘があった時だ。
あのゴタゴタの中、たかが一冒険者の俺を覚えていたとは思わなかったが、向こうからすればホンの数人の秘密結社だ。
覚えるのはそう難しく無かったのかもしれない。

「お前が来たら連れてくるように達しが来ている。大人しく付いて来い」

 到着するなり早速か。
話が早くて助かると思うことにしよう。

 俺は後ろの連中を振り返った。
カルタスは笑っている。
オレコもとぼけた顔をしている。
トラゴスは……たぶん状況が判っていないな。

 俺たち四人を数十人体制で取り囲み、そのまま連れて行く。

「おい、俺たち相手にしちゃ物々し過ぎないか?」

 カルタスが嬉しそうに言った。

「何が嬉しいんだ?」

「別に?ただ何が起こるのか興味があるじゃねえか」

 そんなもんかね。
俺はちっとも楽しくないが。

 帝国領内は当然一つの国だ。
その中でも城壁に囲まれた内側は、いわゆる城下町と言うことになる。
中流以上の国民が住んでいる。
具体的には主に商人だ。

 外側は貧しいものや、農夫などの一次産業を生業とする者たち。
身分による差別的な事が特にあるわけでは無いようだが、単純に町中での農業や牧畜は無理があろう。

 前後左右をガッチリと固められたまま、真っ直ぐに城へと向かっている。
いきなり皇帝と謁見か。
さすがにそれは無いと思うが。

「ここへ入れ」

 城に向かうずいぶん手前で、道の途中にあった建物に入るように促された。

「なんだここは?」

「いいから、言われた通りにしろ」

 まあ、いざとなったら如何ようにしても脱出できる。
ここは様子を見るか。
俺は言われるままに建物へ足を踏み入れた。

 ガチャリ

 背後でドアが閉まる。
おそらく鍵も掛けられているし、外からも押さえられている。
カルタスもオレコも全く動じていないのはさすがだ。

 辺りを見回す。
窓は無い。
真ん中にテーブルが一つあって、その上に燭台がある。
その蝋燭が部屋をぼんやりと照らしていた。
他には何も無い。

「なんだこの部屋は?」

 カルタスが辺りを歩き回る。
動きが訓練を受けた兵士の動きだ。
少しも隙がない。
オレコも壁や床を確かめている。
さすがは元レンジャー、いや、ソルジャーか。

「ただの部屋ね。その割りに窓もないし、生活感ゼロだけど」

 部屋の奥に進むと、入り口以外唯一のドアがある。
奥に部屋があるのか。
俺はドアを開けた。
廊下があって突き当たりにまたドアがある。

 何かのアジトか。
おかしな造りだ。
少なくとも店舗や民家ではない。
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

感情の贈与税 〜光の加護より、確かな契約。没落令嬢による国家再生録〜

しょくぱん
恋愛
「君のような地味な女、僕の隣にふさわしくない」 魔王軍を討伐し、凱旋した公爵令息カシアンが放ったのは、婚約者エレナへの冷酷な決別だった。 彼の傍らには、可憐な「救国の聖女」レティシア。 だがカシアンは忘れていた。彼の眩い金髪も、魔王を圧倒した剣技も、すべてはエレナが十年間「愛の贈与」として捧げ続けた魔力の賜物であることを。 「……承知いたしました。では、滞納分を含め、全魔力を今この場で『徴収』いたします」

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

親世代ではなかったのですか?

立木
恋愛
親世代が「乙女ゲーム時代」だったと思っていたら、子世代も「乙女ゲーム」だった。 ※乙ゲー転生ですが要素は薄いです。 ※別サイトにも投稿。 ※短編を纏めました。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。