見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二九七

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 結局通常攻撃で叩きのめすしかないと言うことか。
まあ、俺はそっちの方が専門分野だが。

「じゃあついでに聞いちゃおうかしら。あっちは何かしら?」

 オレコが話に入ってきた。

「判らないな。たぶん向こうもアンデッドだとは思うんだけど」

 正体を看破するにはさすがに情報が少なすぎるか。

「管理人、聞こえるかい?」

 俺は管理人を呼び出した。

「聞こえますよレオさん」

「賢者さまは居るかい?」

「少々お待ちください」

 そう言って数秒の間があった。

「おお、見ておるぞ。凄いのうこの仕組みは」

 ややあって、賢者サルバスの声が聞こえてきた。

「たぶん映像もお見えかと思いますが」

「うむ。見えておるぞ」

「少しお知恵をお貸しください。あの者が見えますか?」

 俺は姿を現したウォーロックたちを見た。

「ふむ。また珍しい者と遭遇しておるのう」

「片方はワイトではないかと思うのですが、もう片方が判りません。賢者さまなら御存じではないかと」

 賢者サルバスはしばし考え込んだ。

「おそらく、レイスではないかのう。はっきりとは判らんが」

 賢者でもはっきりした事は判らないのか。

「レイスはの、霊じゃ。しかもよくない方のな」

「霊……ですか」

「左様。言わば悪霊の類いだ。しかもなかなか質が悪くてな」

 どういう事だ。

「レイスは『共歩き』と呼ばれる存在の一種だ。判るか?」

 共歩き。
確か自分そっくりの姿で現れ、本人が遭遇すると死ぬと言うアレか。

「つまり、人前に現れる時は毎回姿が違う。その本性を知る者は少い。故にワシも見るのは初めてじゃ」

 なるほどな。
確かにこの姿を見せること自体がレアなら、サルバスにもはっきりと判らなくても不思議はない。

「まあ、ワシくらいになれば見ただけでも察しは付くがのう」

 そう言ってサルバスは高笑いした。
さすがは賢者。
伊達にドラゴン級とは呼ばれていない。

「何か戦い方にアドバイスがあればお教え下さい」

「魔法職は居るか?」

「いえ」

「だったら力いっぱい殴れ。お前さんは得意だろ?」

 ヴァンパイア戦の事を言っているのか。
まあ、そのつもりではあったが。

「また。さっきから誰と話してるの?」

 オレコが訝しむ。

「いや。それより正体の察しがついたぞ。レイスらしい」

 俺は賢者サルバスの見解を伝えた。

「レイス?」

 オレコはピンと来ていない。

「レイスか……ドッペルゲンガーの類いだね」

 マザが言った。
こっちはピンと来ているようだ。

「ドッペルゲンガー!?やだ、私たち死んじゃうの?」

「落ち着け、誰も真似られてない。大丈夫だろう」

 俺はそう言ってオレコをなだめた。

「ほんとう?」

「……たぶんな」

「ほらあー!」
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