見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三一〇

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「そんな事は決まっている」

 オオムカデンダルが胸を張る。

「なんだ、言ってみろ」

 カルタスが挑むように問い詰めた。

「何もしない」

「はあ?何だと?」

 オオムカデンダルの言葉にカルタスがつんのめる。
いや、俺でさえもズッコケそうになったのだから、他は推して知るべしだ。

「ふざけているのか!?」

「いいや、俺は本気だ。民衆に対しては特に何もしない。今まで通り好きにさせるさ」

 オオムカデンダルは少しも悪びれる事無くそう言った。

「なら、征服などしなくて良いではないか。散々今の世界を否定するような事を言っておきながら、何もしないなどと……」

 カルタスは憤慨した。
無理もない。
いや、当然だ。

「お前が最初に口にした、人は自由であるべきと言うのは賛成だ。俺も同じ考えだからな。支配などクソ食らえと言うのも同意する。だがそれは小さな市井の民に対してだ。それを食い物にする奴らや化け物に対しても、自由にせよと言うつもりは一ミリも無い」

 つまりどう言う事だ?
俺たちはオオムカデンダルの次の言葉を待った。

「判るか?支配なんて面倒臭いこと、誰もやりたくないんだよ。文句を言われこそすれ、感謝される事などほとんど無い。それをしたいと言う奴らには下心があるってこった」

「お前の言うことはちっとも判らん。俺はもともと賢くは無いが、それでもちっとも判らんぞ」

 カルタスが頭を掻きながらボヤいた。

「ふふ、正直な男だ。気に入った。もう少し話してやる」

 オオムカデンダルが楽しそうに話を続けた。

「つまりだ、支配と言うから判らなくなるんだ。言い方を変えよう。管理するだ」

「判らん。どう違う?」

「管理する。つまり把握するって事だ。人々は自由に暮らせば良い。だが、ルールは必要だ。それに抵触する者は取り除く」

 オオムカデンダルはいつもの口調で言ったが、俺は取り除くと言う言葉に少し不安を覚えた。

「人が生きていく為にはルールが必要なんだ。それぞれが自分勝手にしていては世の中に争いが絶えないだろ?人々は守らなければならないんだよ」

「……アンタは何故そこまでして人を守ろうと言うのか」

 カルタスは判らないと言う顔で尋ねた。

「……この星と言う物にとって、人類が必要不可欠な存在だからさ。長い年月を掛けて星は人類と言う答えに辿り着いた。そして俺たちはこの星に産み出された。必要だからだ。だが、人類は矮小で、不安定で、か弱い存在だ。守らなければならない理由はそこにある」

 星?
この大地の事を言っているのか?

「今は判らなくても良い。いずれ俺たちといれば少しずつ理解できるだろうさ。だから俺たちと来い」

 オオムカデンダルはそう言って、カルタスとオレコを見渡した。
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