見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三二九

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「……ソル皇子の話によれば、特殊な資質を持った人間と言う事らしい。そして必ず厄災をもたらすと言っていた。だから忌み子なのだと」

 俺は聞いた話をオオムカデンダルに話した。

「忌み子ねえ。あの何とか言う将軍もそんな事を言っていたな。だから殺すのだと」

 それはルドム将軍だ。

「で、なんで厄災をもたらすんだ?毎晩押し掛けて来るのか?」

 オオムカデンダルはあまり興味無さそうに尋ねた。

「餌なんだそうだ」

「は?」

 オオムカデンダルが間の抜けた返事をした。

「餌だ。邪神の餌になるんだそうだ。邪神はタレントしか食わないらしい」

 オオムカデンダルが途端に身を乗り出した。

「ふうん。そのタレントてのは背中に例のアザがあるヤツって事で良いんだよな?」

 そうだ。
あのうごめくアザ。
あれこそがタレントの証しなのだ。

「魔法とは根源の違う、何か特殊な力を持つらしい」

 俺はソル皇子から聞いたことをそのまま話した。

「聞いた感じだとタレントってのはかなりのレアなんだろう?そんな数少ない個体が餌だとは、さぞかし栄養価が高いんだろうな」

 そう言ってオオムカデンダルは笑った。
どこが面白かったのか俺には判らなかったが、オオムカデンダルジョークと言ったところか。

「皇子は助けてくれと言っていた。タレントと関わりを持ってしまったら、邪神との関わりも強制されるらしい。追放しても無駄なのだと。殺すしかないと言っていた」

 オオムカデンダルは腕組みをして自らのアゴを触った。

「なるほどねえ。だから赤子を殺すと」

 そう呟いたオオムカデンダルは少し機嫌が悪そうに見える。

「気に入らないな。赤子は何も知らずに生まれてきただけだ。望んでそこに生まれてきた訳ではない」

 カルタスもオレコも驚いたような顔でオオムカデンダルを見た。

「自分たちが可愛いから赤ん坊を殺すと言うのか。支配者の風上にも置けんな」

 オオムカデンダルは破天荒に見えるが、こう言うところで義憤を露にする。
悪党とは思えない理由がこれだった。

「支配者とはどう言う物か、俺たちが教えてやる」

 オオムカデンダルはそう言って俺たちを見回した。

「どうするの?」

 オレコが恐る恐る尋ねた。

「決まっている。赤子は殺させない。邪神は殺す。そして帝国には潰れてもらう」

 俺たちは絶句した。
いや、俺は薄々勘づいていた。
だが、カルタスとオレコは純粋に驚いた筈だ。

「……て、帝国を潰す!?」

「……は、はは、マジかよ」

 オオムカデンダルは真顔で続ける。

「当たり前だ。民を守れない皇帝になんの価値と正統性があるんだ。そんなヤツは要らん。その辺のゴーレムにでも喰わせてしまえ」
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