見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三三一

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レイスの記憶か。
だったら早く続きを見るべきだ。

「お前はせっかちだな。だが、妹が気がかりじゃ仕方ないか。良いだろう続きを見てみよう」

 オオムカデンダルはあまり乗り気では無かったが、俺の意見を汲んでくれた。
彼としてはもっと細かく分析して考察したかったに違いない。
映像が再び板に映し出された。

「あ、ちなみにこれはモニターと言うんだ。板じゃないから覚えておけよ」

 オオムカデンダルは俺たちに向かってそう言うと、続きの映像をモニターに映した。

「ところで何名かは来ておらぬようだが……」

 キメラの声がそう言った。

「リッチとバルログは来はしまい。あれらは本来群れるのも下に付くのも嫌がるからの。この中に加わっているだけでも珍しい事よ。他はそれぞれ別件で動いておる」

 女の声だ。
女も居るのか。
いったい全部で何名居るのか。

「プニーフタールの下でなければ、本来我らと意思を一つにする事も無かった者共だ。捨て置け」

 これも初めて聞く声だった。
映像はそこで終わった。

「終わりか?」

 俺はオオムカデンダルに言った。

「このシーンはどうやらそのようだな」

「記憶が全部詰まっているんじゃなかったのか?」

 俺は嫌味混じりに言った。

「記憶なんてそんなもんだ。お前だって丸一日の記憶が全部ある訳じゃないだろ?十日前の昼に何食ったかおぼえてるか?」

 オオムカデンダルは怒るでもなく、平然とそう問いただした。

「そ、それは……」

 そう言われると困る。
確かにそんな事まではイチイチ覚えていない。

「つまり、そう言う事だ。大事な事や印象深い事は覚えているが、どうでも良い事はどんどん消えていく。短期記憶にあるうちならまだ良いんだがね」

 つまり、時間が経つほど大事な記憶以外は消えていく訳か。
俺は歯軋りした。
コイツにとってどうでも良かろうと、俺にとっては大事な事だったかもしれない記憶が消えていたとすれば、その損失は痛すぎる。

「それよりも、さっき出た名前……」

 話し出したオレコの顔色が悪い。

「リッチとバルログって……」

 確かにそんな名前を言っていたな。
知っているのか。

「なんだ、知り合いか?」

 オオムカデンダルがとぼけたように言った。

「違うわ。リッチはアンデッドの中でもアンデッドの王と恐れられてる存在よ」

 アンデッドの王?
そんな有名人なのか。

「また大層な肩書きだな」

 オオムカデンダルが鼻でせせら笑う。

「本当に危険な存在なのよ」

 オレコは真顔で訴えた。
何がそんなに危険なのか。

「元は人間の魔導士が不死の方法に辿り着くとリッチになると言われているの」

 元は人間か。
そのパターンはワイトに似ている。
あっちは元は妖精らしいから、ワイトの方が危険な気もするが。
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