見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三五七

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「な、テメエ……本気か!?」

 マイヤードが俺を睨み付ける。

「もちろん」

 マイヤードが目を見開いて立ち上がる。

「ふざけるなあっ!いくらテメエが強かろうが、あまり調子に乗るんじゃねえぞ!若造があっ!」

 そこまで一気に捲し立てると肩で息をした。

「ふざけてなどいない。抵抗するならすれば良い。でなければ、お前らはここから叩き出される事になる」

 マイヤードが歯ぎしりする。

「確かにテメエの腕っぷしは見事だ。金貨五枚どころか十枚の価値が有るかもな。だがよ、世の中はテメエが思うより広いんだよ。こっちの世界にゃテメエなんぞが思いもよらねえ腕利きがいくらでも居るって事を思い知らせてやる」

「へえ、その中にアンタは入ってないのかい?アンタ、この辺りの顔なんだろ?」

 俺はマイヤードを皮肉った。

「ちっ……確かにテメエの思ってる通り、俺の腕っぷしはそれほどじゃあねえ。だがな、何も腕っぷしだけあれば上に立てるって訳じゃねえんだぜ?」

 どう言う意味だ。

「ふん……力にも色々と種類があるって事さ」

 そう言うとマイヤードはくるりと背を向けた。

「オメエ名前は?」

「レオだ」

 マイヤードは背中でそれを聞き届けると、ゆっくりと歩きだした。

「レオか。覚えたぜ」

 そういい残して、そのままマイヤードは去っていった。
それを見送りながら、俺はグラスに残った酒を飲み干した。

「良いんですか?断っちゃって」

 少女が心配そうに俺を見た。

「構わん。それよりもう一杯頼む」

「はい」

 少女は笑顔でグラスに酒を注いだ。

「お客さん、困りますよ。うちで派手に暴れられたら」

 いつの間にか、さっきの男が立っていた。
気配が全くしない。
何者だコイツ。

「私はこの店のオーナーをしているバッケスです。以後お見知りおきを」

 うやうやしく頭を下げる。
ただの酒場のオーナーではあるまい。
油断ならないタイプだ。

「あなた様は、あのマイヤード様に一目置かれたと見ましたが」

「さあな。知らん」

 バッケスが眉ひとつ動かさずに口元だけで笑った。

「たいした貫禄です。どうです?良かったら今晩の飲み代は私のおごりとさせて下さいませんか?」

「おごってくれるのか?だがそれには及ばない。たいして飲んでないからな」

「はっはっはっ、まだまだこれからお飲みになるでしょう?酒だけでなく色々とサービスさせて戴きますよ」

 バッケスがそう言うと、さっきまでマイヤードに付いていたあの女が側へやって来た。
そうして少女を押しやると自分が俺の前に座る。

「サービスさせて戴きますわ」

 上目使いで俺を見る。
色仕掛けか。

「ふん、そう言う事か」
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