見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三六〇

 結局そのまま店が閉まるまで俺は店に居た。
明け方になってようやく店は閉店した。
まあ、この手の店なら普通だろう。
俺は余分に金を払うと、とりあえず店を後にした。

 さて、とりあえずねぐらを決めなくては。
この辺りに宿屋はない。
あるのは精々連れ込み宿くらいだ。
俺はどこで寝ようとも気にはならないが、さすがに連れ込み宿に一人で泊まるのは気が引けた。

 仕方がない。
もう少し冒険者の多そうな大通りまで行くか。
俺は繁華街を離れ、大通りで宿屋を探した。
これからは夜が俺の行動時間だ。
一眠りしてからどうするか考えよう。
あの酒場はこれからも通う事になるだろう。
あのバッケスとか言う男と、マイヤードって奴に名前を売ったんだからな。
きっと何か起こる筈だ。
俺はベッドの中でそんな事を思いながら眠りに就いた。

 翌朝。
もとい、翌晩。
昨日と同じ頃合いに目が覚めた。
俺はベッドから抜け出ると、適当に仕度をしてから宿を出た。

 昨日の店に向かう。
キロがいる筈だ。
昨日の今日で心配だが、どうなっているか様子を見てみよう。
店の近くに差し掛かると、昨日と同じくキロが客引きをしていた。

「お客さん!どうですか?お安くしておきますよ!」

 行き交う男性客に、あっちへこっちへと走り回って声を掛けている。

「おい」

 俺はキロに声をかけた。

「あ!レオ様!」

 キロは俺の姿を見付けると、犬みたいに走り寄ってきた。
人懐っこいヤツだ。

「今日も来て下さったんですか?」

「ああ。どうしてるか様子を見に来たんだ」

 キロがパッと笑顔になる。

「はい!お陰さまで、今日からお客さんに付かなくても良くなったんです!」

 それで客引き専門になったのか。

「いえ、客引きが終わったら、洗い物やお店のお姉さまたちのテーブルにお料理を運んだり、仕事は山ほどあります!」

 そんなに大変なのか。
普通はそれぞれ専属の係がいて、分担作業をしているのが一般的だが。

「お前、休みは無いのか?」

 俺は不思議に思って尋ねた。

「お休みはありません」

 本当か。
いくらなんでもそれはキツいだろう。

「でも、お客さんに付かなくても良くなったので」

 何かが改善されても、それで全てが上手く行く訳では無い。
そんな事は判っているが。

「よし、付いてこい」

 俺はキロを連れて店内に入った。
入り口で店の案内が、俺の顔を見てギョッとした。

「……なんだ?俺の顔に何か付いているのか?」

「い、いいえ」

「この子を俺のテーブルに付けさせろ」

「は?い、いやしかし……」

「なんだ。何か問題でもあるのか?」

「貴方が客を取らせるなとおしゃったのでは無かったですか?」

 背後からバッケスの声がした。
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