見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三六二

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「あだだだだ!いてええ!」

「ほら言えよ。ごめんなさいだ」

 男は悶絶していたがごめんなさいとは言わない。
雑魚とは言えそれなりにプライドはあるようだ。
力自慢には多いタイプだな。

「本当に折れちまうぞ?」

「ふざけんな!離しやがれ!」

 そうか。
ならばお望み通りに折ってやろう。

 ミキ……ミシミシ……

 関節が嫌な音を発てる。

「うぐあああ!」

「もうそのくらいで許してやって下さい。そんな馬鹿でも一応うちの従業員でしてね」

 バッケスが口を挟んだ。
俺は男の腕を離して地面に転がした。

「ずいぶんと止めるのが遅かったじゃないか。折らせるつもりかと思ったぜ」

 俺はバッケスを横目で見た。

「いえ、突然の事に驚いて声が出なかっただけですよ」

 バッケスが涼しい顔で言った。
嘘つけこの野郎。
あわよくばと思ったのだろうが、思い通りにならなかっただけだろう。

「それではごゆっくり」

 バッケスがそう言うと男はバッケスに付いて行ってしまった。

「キロ、早く呼んでくるがいい」

「あ、はい!」

 キロは慌てて返事をすると弟たちを呼びに走っていった。
アイツいつも走ってんな。
俺はソファーに腰を下ろすと酒を注文した。
自分で注いで自分で飲む。
何の為にこういう店に来たのか、全く意味がない。
まあ、今はそれが目的では無いから我慢しよう。

 そうして三十分ほど経った頃、キロが弟たちを連れて戻ってきた。

「連れてきました!」

「意外と早かったな」

 キロを見るとその後ろに小さな男の子が二人、隠れるように立っていた。
なんだ、人見知りか。

「まあ、座れ。それから料理を注文するがいい」

「はい。ピコ、ナノ。二人とも座って」

 キロはそう言って弟たちを座らせる。

「ねえね、本当にいいの?」

「ええ、レオ様がご馳走してくださるのよ。ちゃんとお礼を言いなさい」

 キロがそう言うと、弟たちは素直にお礼を言った。

「れおさま!ありがとうございます!」

「あ、いや、うん。気にするな、好きなのを食べろ」

 俺は何故だか少し照れ臭くなって、適当に食事を摂るように勧めた。

「あたし、注文してきます!」

 キロはそう言うと、また厨房へと走っていった。
しばらくすると、次々に料理が運ばれてくる。
こんな店の料理などたいして期待していなかったが、予想に反して豪華な料理が並んだ。

「ちゃんとしてるな……」

 俺は思わず呟いた。

「お忍びでお金持ちのお客様も結構いらっしゃるんです。だからお料理も腕の良い料理人を専属で抱えて居るんですよ!」

 なるほど。
それなのにキロが皿洗いとは、他に人手は無いのか。

「あたしは、見習いの見習いのそのまた小間使いですから」

 キロはそう言って明るく笑った。
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