見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
363 / 826

三六三

 金持ちや高い地位にある者ほど、裏では何をしているか判った物ではない。
こんな店に世を忍んで通う事を見ても、普段は変態趣味を隠している事が伺える。

「わあ!美味しそう!」

「たくさん食べてもいいの?」

 弟たちが口々に尋ねた。

「もちろんよ!お腹いっぱい食べなさい」

 キロが笑顔でそう言った。

「いっただっきまーす!」

 ナノとピコはそう言ったかと思うと、猛然と料理を食べ始めた。

「にぃに。美味しいね!」

「うん。美味しいな!」

塩漬けにした肉と野菜をパンに挟んだもの、野菜と羊肉を使った煮込み料理、ポテトを潰して油で揚げたもの、皿一杯のスクランブルエッグ、羊の腸に塩と血を詰めて薫製にしたもの、他にも様々な料理が並んだ。

 俺でさえ普段口にしないような豪華な料理だ。
こんなに食べきれるのか?
まあ、気持ちが満足するならそれで構わないが。
周りの席の客たちも気になるのか、次第に身を乗り出してこちらのテーブルを覗き見た。

「ほお。豪勢だな。どこの御大尽だい?」

 一人の男がテーブルの横に立って、並んだ料理を見ている。

「別に、ただの冒険者さ。いつも腹を減らしていると聞いてな、たまには腹一杯に旨いものを食わせてやりたいってだけだ」

 男は小さな声で、へぇと言った。

「アンタの子って訳じゃ無いんだな。アンタずいぶんと優しいんだな」

「よせよ。ただの気まぐれだ」

「ところでアンタ、レオって名前かい?」

 俺はそこで男を見上げた。

「そうだが、お前は誰なんだ?」

「俺はファズって言うんだが……聞いたこと無いか?」

「有名人なのか?済まんな、俺は世俗には疎くてな」

 男はため息混じりに笑った。

「いや、冒険者ならそんなもんかもな。自分で言うのもなんだが、これでも少しは有名人なんだぜ?」

 パッと見、確かに一般人らしくは無い。
なんと言うか垢抜けているように見える。
野暮ったさが無かった。

「なんだ。歌手か芝居役者か?一介の冒険者に声をかけるなんて、どう言う風の吹きまわしだ?」

「ははっ!残念だがどっちも外れだ」

 俺はもう一度男を見た。
爪先から頭のてっぺんまで見たが、何者なのかサッパリ見当も付かなかった。
ふと見ると、キロはうつ向いている。

「なんだ?どうした」

 俺はキロに尋ねた。
具合でも悪くなったのか?

「俺はね、この辺りで顔のスラッグの片腕なんだよ」

 スラッグ。
確かマイヤードがその名を口にしていたな。
なるほど、そいつの懐刀って訳か。

「そいつが俺に何の用だ?」

「はっ!スラッグの名を聞いても無反応とは、アンタ本当に世俗に疎いんだな」

「言ったろ?俺はただの冒険者だ。帝国の市民では無い。有名人の知り合いも居ないし、必要もない」
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】1王妃は、幸せになれる?

華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。 側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。 ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。 そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。 王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?

元婚約者だったお兄様が後悔したと私に言ってくるのですが…

クロユキ
恋愛
親同士が親友だったと将来お互い結婚をして子供が生まれたら婚約を結ぶ約束をした。 お互い家庭を持ち子供が生まれたが一家族の子供は遅い出産だったが歳が離れていても関係ないとお互いの家族は息子と娘に婚約を結ばせた。 ジョルジュ十歳、オリビア0歳で親同士が決めた婚約をした。 誤字脱字があります。 更新が不定期ですがよろしくお願いします。

親世代ではなかったのですか?

立木
恋愛
親世代が「乙女ゲーム時代」だったと思っていたら、子世代も「乙女ゲーム」だった。 ※乙ゲー転生ですが要素は薄いです。 ※別サイトにも投稿。 ※短編を纏めました。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。