見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三七二

「どう言う事だ」

「お前の事は、もうこの辺りの裏社会では噂になっている」

 ふむ、予定通りだ。

「だから俺をやっちまおうと思ったんだろ??やらないならなぜ後を付けてきた?」

「もちろん不意を突く為だ。バレてるなら意味は無いとさっき言った」

 そりゃそうなんだろうが、なんだか肩透かしだ。

「おいおい。それで俺が、判ったお疲れさん、とでも言うと思うのか?」

「判っている。だからうちの頭に会ってもらう」

「何の為に」

「お前が敵でないのなら、お互いに干渉しない。それが可能か判断してもらう為だ」

 犯罪組織と言うのも、なかなか政治色が強いな。

「俺が合意しなかったら?」

 女は俺の目をじっと見た。

「その時はあらゆる手段を講じる」

「お前らには俺は倒せんと思うがな」

「……お前は倒せなくても、後悔させる事は幾らでも出来る」

 女は俺から視線を外した。
コイツ。
視線の先は俺の背後に向けられていた。
この先に居るのは、キロだ。

「面白い。今の話だけでお前らをぶちのめすのには十分な理由だ」

「まだ何もしていない。お前の返答次第だと言うのだ」

「うるせえ。取引できる相手かどうかの問題だ。端から奥の手をチラつかせて結局言うことを聞かせようって相手と話す事などない」

「……なんだと?」

 女が動揺する。

「動くなよ。お前の仲間が先走ってあの子らに手を出したら、その時点でお前を殺す。お前らの仲間も殺す。お前らの頭も殺す」

「ハッタリは止せ。いくらお前が腕利きでも、同時に二つの事など出来はしない」

「試してみろよ」

 俺は女に迫った。

「くっ……!」

 女はジリジリと後ずさる。

「どうした、やってみろ。お前を殺してあの子らを守って、仲間を全滅させるのに十秒も掛からんぞ?」

「ま、まさか……」

 女は苦悶の表情を浮かべた。

「待て」

 背後に女の声がした。
コイツの仲間か。

「判った。一切手は出さない。約束しよう」

「お前の約束にどんな価値があるんだ?」

「お、お頭……!」

 女が、カシラと言った。
俺はゆっくり振り向いた。

「俺が頭の銀猫だ」

 短い銀色の髪。
猫の瞳のような金色の目。
確かに銀猫と言うのも頷ける。

「本名か?」

「まさか」

 そう言って銀猫は鼻で笑った。

「カシラが直々に約束すると言うのか」

「そうだ」

 銀猫が右手を高々と上げる。
視界に映った光点が、次々とその場を離れて雑踏の中へと消えていった。

「なるほど。確かにな」

「判るのか?」

「ああ。判るぞ」

「恐れ入ったな。やはり敵に回すのは得策で無さそうだ」

 銀猫が感心したように言った。

「で、俺に会ってどうする気だ?」
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