見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三九六

 しかし。
俺は無くなった壁を、つまり何もない空間を見た。
向かいの建物が見える。

「どうやったら壁ごと粉砕できるんだ?」

 俺は疑問を口にした。

「そりゃあ、おめえ、令子にもらったこの武器でよ……」

 カルタスが傍らに立て掛けた例の大剣を、手でポンポンと軽く叩いた。

「カルタスソードね」

 オレコが目を細めて言う。
確かそんな名前だったな。

「違う!そんな名前じゃねえ!」

「じゃあどんな名前にしたんだ?」

 カルタスは俺の問いに、待ってましたとばかりに胸を張った。

「コホン……ツーハンデッドクレイモア・ファイヤーバスタードだ!」

「……長いな」

「長いわね」

「長いですね」

 俺もオレコも、キロまでもが同意見だった。

「じゃあ通称は、カルタスソードって事で」

 オレコがまとめたが、カルタス以外は意義無しだろう。

「ちょ……お前ら待てよ!」

「オレコの方はどうだ?」

 俺はカルタスを無視して、今度はオレコの情報を求めた。

「ファズと言う男のボスはスラッグ。これはもう知ってると思うんだけど、実際にスラッグなる人物に会った事があると言う話は一つも聞けなかったわ」

「どう言う事だ?」

「見た人さえ居ないと言う事ね。実在するかの確証も持てないと言うのはかなり珍しいパターンね」

 いくら帝国が広いとはいえ、裏社会その物はそこまで大きくない。
しかも情報飛び交う裏の社会で、見た者が居ないと言うのは不自然だ。

「じゃあ、レオがぶっ飛ばしたファズって奴がスラッグだったんじゃねえのか?他に黒幕が居るフリをしてよ」

 無くは無いだろうが、どうもそんな雰囲気では無かった。
ファズ自身は欲望に忠実で、気の向くまま自由気ままに行動していた。
とても組織を率いるような玉では無い。
短絡的で、行き当たりばったりな男だった。

「それからマイヤードと言う男が率いる鉄鎖会。規模は一番大きくて人材も豊富。金と人脈と人海戦術を得意とするナンバーワンの裏組織ね」

「それは今日屋敷を突き止めた。偶然だったが、確かに成金趣味だったよ」

 俺はオレコの話に乗った。

「あらそうなの?なかなかやるじゃない」

 オレコがそう言ってウインクする。
だから、そう言うのはやめてくれ。

「あと一つが三番目の有力組織、銀猫団ね。ここは何故か評判が良いのよ」

「裏組織なのに評判が良いって」

 そう言ってカルタスが鼻で笑う。

「どうもこの辺りの商売人や、貧しい人たちを助けてるみたいね。厄介ごとから守ったり、飢えてる子供たちを食べさせたり。色々慈善的な事もしているみたい」

 銀猫か。
確かにあまり敵対心は見えなかった。
だからと言って善人とするのもどうかとは思うが。
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