見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四〇四

 一瞬。
一瞬よりももっと一瞬だ。
俺は最初からそこに居たかのように、ワーウルフの懐に入っていた。
目の前に俺がもう立っている事さえ、まだワーウルフは認識出来ていない。

『二』

 俺はパンチを放つ。
左右交互にパンチの連打をワーウルフに浴びせかけた。

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

 何十発とパンチを食らって、ワーウルフは吹き飛んだ。

『一』

 建物の外壁を突き抜けて、ワーウルフが二階から外へと身を踊らせた。
俺はそれを追って自らも外へと飛び出す。
そして、地面に突っ伏したワーウルフ目掛けて膝から落下した。

『零』

 サフィリナックスミラージュの効果が切れると同時に、ワーウルフは俺のニードロップを食らい口から胃液を噴いた。

 短い時間だけ瞬間的に高速で動く事が出来る力。
それがサフィリナックスミラージュの力である。
サフィリナックスミラージュの効果時間は三秒と短い。
上位魔法の『ヘイスト』と比べれば、その効果時間は一瞬である。
しかし、その効果はヘイストとは比較にならなかった。

 素早さが倍になる。
ヘイストの効果ではそれが限界だ。
それでも上位魔法に分類されるほど、ヘイストの効果は絶大だ。
ソーサラーの上位職であるウィザードかメイジでなければ唱える事さえ出来ない。

 サフィリナックスミラージュは三秒と言う短さだが、その俊敏性は元の十倍以上だ。
仮に百メートルを十秒で走ると仮定しても、サフィリナックスミラージュなら一秒かそれ以上で走れる。
サフィリナックス自身の身体能力をフルに発揮すれば、もっと早く走る事も出来る筈だ。

 だが。

 俺はその場にうずくまった。
もう動けない。
信じられない疲労感が俺を襲った。

「……オレコ、後は頼んだ。生け捕りにしろって……よ」

 変身が解け、俺は完全に動けなくなった。

「おい!レオ!」

「ちょ、ちょっと、レオ!」

 カルタスとオレコの声が、段々と遠くなっていく。
まだ敵は残っているが、この程度なら彼らに任せても問題ないだろう。
俺は諦めてその場に寝転がった。
もう、座っているのも辛いのだ。

 これはあまり簡単には使えないな。
俺はそう思いながら周りの音を聞いていた。

「よくやった。後はこっちで何とかするから任せておけ」

 オオムカデンダルの声が聞こえる。
まあそんな事を言っても、どうせ来るのは蜻蛉洲だろうが。

 カルタスの雄叫びとカルタスソードの爆音が聞こえる。
ワーウルフの拘束はオレコがやってくれるだろう。

 さて、コイツらの親玉はどこのどいつだ?
この状況も観ているのか?
ウチのボスも観ているのだから、おあいこだな。
そんな事を考えているうちに、俺は寝てしまった。
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