見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四一六

 キロの姉は宝箱に近付くと、しゃがみこんでゆっくりと宝箱を開ける。
中には色々な物が詰め込まれていた。

「ほお、これは」

 黒猫が目を大きく見開いて、興味深げに中を覗きこむ。
金貨が無造作に七枚、銀貨も同じく十一枚、それから羊皮袋が五つ。
それとは別の羊皮袋にも貴金属類がまとめて入っていた。
宝石類も一緒だ。
指輪やネックレスがたくさん詰められていた。

「この袋には何が入っているんだ?」

 黒猫が尋ねた。

「それは銅貨だ。百枚づつ入ってる。量が多くて困ってるんだ。銀貨一枚に両替するのに、銅貨千枚必要だからな。不便なことこの上ねえよ」

 キロの姉がぶっきらぼうに答えた。
それは確かにそうなんだが、一般市民はほとんど銅貨だけで生活している。
金貨はおろか、銀貨さえ見たこと無いと言う人間も少なくない。
それだけ庶民の生活は質素で、物価も高くは無いと言う事でもあるが。

「まあ、多くの市民が銅貨以外に馴染みの無い暮らしをしている以上、それは仕方がないな」

 黒猫はさも当然と答えた。
俺は驚いた。
いつの間にそんな事まで常識としているのか。
やはりただの変人では無かった。

「お前、なめんなよ。世界征服を目論む者が、世間知らずでどうするつもりだ。お前こそもっと勉強しろ」

 黒猫が俺を叱責する。
まさかこの歳になって、勉強しろなどと言われる日が来ようとは。

「……お前、この猫の何なの?」

 キロの姉が、俺を可哀想な者を見る目で見た。
その目はよせ。

 宝箱の中身は、他には衣類が入っていた。
結構良い服だ。
金持ちを中心に襲っていた事が良く判る。
後は小物か。
小さな鞄のような物がいくつかあった。
それから何だか良く判らない物もあった。

「これはなんだ?」

 俺は小さな金属片を指差した。

「判らん。ただ珍しい金属だから拝借しただけだ」

 なんだ。
そんな物まで収集の対象なのか。
こりゃ、本当にただのガラクタも混じってるな。

「おい、ちょっと待て。そのネックレス見せてみろ」

 黒猫が突然、何かに興味を示した。

「なんだ?これか?」

「いや、違う。ちょっと待て、どれだよ?」

 黒猫の質問が支離滅裂になっている。
何を言っているのだ。

「いや、爺さんがその隣の赤い宝石のはめ込まれているヤツだと言っている」

 爺さん?
なるほど、側にサルバスが居るのか。

「これの事か?」

「そう!それじゃ!」

 黒猫の声はついに老人の声に変わった。
サルバスが直接しゃべっている事が判る。

「と、年寄りの声!?」

 キロの姉が驚いて黒猫を見る。

「そんな事はどうでもええわい。そのネックレス見せてみろ」

 黒猫に言われてキロの姉は、そのネックレスを黒猫の前にぶら下げた。

「……これは」
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