見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四二〇

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 いつか来た道。
マイヤードの屋敷までは俺の足なら数分で着く。
スラム地域に入ってから、人目に付かないように走った。
本気で走ればあっという間だ。
人が振り向いた時には俺はもう居ない。

「ここだったな」

 俺は屋敷の形を確認すると、前回と同じく屋根へと登る。
そして屋根伝いにマイヤードの部屋へと移動する。
触手を伸ばして屋根からぶら下がると、俺は部屋の中を覗いた。

 居るな。
偉そうにふんぞり返ったマイヤードと、何人かの人が見える。
使用人と来客か。
客と言っても身なりがバラバラだった。
如何にも高級な服装の者と、如何にも悪党と言った風体の男たち。
どう言う取り合わせだ。

 まあいい。
今回はどのみち手荒に話を聞く事になる。
来客中だろうが知った事では無い。
俺は構わずテラスに降りると、そのまま窓を開けて中へと足を踏み入れた。

 部屋の中の視線が、俺へと向けられる。

「何者だ……あッ!」

 マイヤードが息を呑む。
覚えていたか。
当然だよな。

「久しぶりだな、マイヤード」

「き、貴様は……!」

「覚えていたか、良い心掛けだ」

 俺は真顔でそう言うと、遠慮なく部屋の中を歩いた。

「マイヤードさん、何ですかコイツは!」

 身なりの良い方の連中が気色ばむ。
一方で悪党らしき方は、マイヤードの前に壁を作った。

「テメエ、マイヤードさんに何の用だ!」

「何の用かは今から俺が話す。邪魔だから横へどいてろ」

「ふざけやがって!」

 予想通りの反応で判りやすいな。
俺は構わず近付くと、悪党どもを両手で掻き分ける。

「こ、この野郎ッ!?」

 どかされた男たちが血相を変えた。

「死ねえ!」

 悪党どもがお決まりのフレーズを叫ぶ。

「死ぬかよ」

 俺はそう呟いて、悪党どもを片手で突き飛ばした。

 どん!

「うおわあっ!」

 男たちは玉突きのように、次々に仲間を巻き込んで部屋の隅へと片付いた。

「くっ……!」

 マイヤードの顔に緊張が浮かぶ。

「お前に聞きたい事がある」

「な、なにをぅ……!」

「お前は何故ブラッドサファイアを欲しがるのか」

「!?」

 組織を束ねるボスであっても、核心を突かれると表情に出る。
ホンの一瞬だったが、俺はそれを見逃さなかった。

「……貴様、何故ブラッドサファイアの事を」

「諦めろ。もうお前の手には渡らん」

「なに!?」

「それは俺たちが手に入れた。だからもうお前の手には渡らん」

 俺がそう言うと、マイヤードの顔には狼狽が表れた。

「……くそっ!何故貴様が手に入れるのだ!どうやって手に入れたんだ!」

「ウチのボスが金で買っただけだ。簡単に手に入ったぞ」

 マイヤードが驚いた。

「な……金だと!?いったい幾らだ!」

「金貨五十枚だ」
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