見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四三三

 ヴァンパイアは悪びれる様子も無く肯定した。
人間など虫ほどにも思っていないのだ。
遠慮などする訳も無い。

「……お前にはヴィジョンはあるか?」

 俺はヴァンパイアに尋ねた。

「ヴィジョン?」

「そうだ。お前の言うあのムカデ男は言っていた。支配者にはヴィジョンが必要なんだとな。ヴィジョン無き者には支配者の資格は無いんだそうだ」

ヴァンパイアが怪訝そうな顔をする。

「……いったい何だい?そのヴィジョンと言う物は」

「言っておきながら何だが、実は俺にも良く判らん。目指すべき理想像とでも言えば良いのか……」

 オオムカデンダルは説明していたが、彼らの価値観や概念は初めて聞く物も多い。
ましてや、支配者の心構えのような物は俺にはピンとこなかった。
おそらくどんな世界にしたいか、と言うような事なんだろうと思う。

 オオムカデンダルは『それだけでは六十点の答えだ』と言っていたが、その時の俺にはそれ以上の事は思い浮かばなかったのだ。

「理想かい?理想なら僕にもある。この世界を僕の物にする事だ!良いだろう?全てが僕にひれ伏す。何もかもが思いのまま!僕が真の王になるんだ!」

 ヴァンパイアが嬉しそうに胸を張った。
実際には銀猫の胸に張り付いている方だったが。
とにかく、それがコイツのヴィジョンらしい。

「……それで、その先は?」

「なんだって?」

「その先だよ。お前が真の王になってその先はどうなるんだ?」

「何を言っている。僕が王になるのが全てじゃないか。その先など無い。それが永遠に続くんだよ」

 ヴァンパイアは不快そうに言った。

「なるほどね。つまらん」

「なに?」

 俺の言葉にヴァンパイアが敏感に反応した。

「僕の理想をつまらんだと?」

「つまらん」

 ヴァンパイアが歯軋りする。

「まったく……僕は君の事を人間にしては少しはやるなと評価していると言うのに、そう言う生意気な所が腹立たしいんだ!」

 俺の事を評価していたのか。
まっぴら御免だが。

「オオムカデンダルは違う。彼の野望は聞いていてもワクワクするんだ。それが恐ろしい事を言っているのかもしれないと判っていても、その世界をこの目で見てみたい。そう思わせるのだ。お前にはそれが無い。所詮はモンスター、人間のような創造性に欠けているんだよ。モンスターには世界は創れん」

 ヴァンパイアの顔が鬼の形相と化す。

「なん……だ……と!貴様!この僕を馬鹿にするなあッ!」

 ヴァンパイアが怒りに叫んだ。
地が出たな。
結局これがコイツの本性だ。
夜の帝王だか魔王だか知らないが、究極のエゴの塊。
俺は最近ようやく、モンスターとは何なのか判ってきた気がする。

「悪いがお前に支配者は任せられん」
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