見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四四七

「蜻蛉洲……」

 俺は思わず蜻蛉洲の名前を呟いた。
オニヤンマイザーは地面に転がったヴァンパイアを覗きこんだ。

「ふぅむ。コイツ、首だけになって生きながらえたのか。しかも他人と同化して変異までしている……」

 オニヤンマイザーが足でヴァンパイアを転がした。
やめろ。
それは銀猫の体なんだ。

 オニヤンマイザーはしばらくヴァンパイアを検分していたが、やがてそれを持ち上げると肩に担いだ。

「……また持って帰るのか?」

「もちろん」

 俺の質問にオニヤンマイザーは興味無さげに答える。

「サンプルって奴か」

「そうだ」

 蜻蛉洲はいつもそうやって戦闘後のモンスターを回収していた。

「……集めてどうするんだ」

 俺の問いに蜻蛉洲は初めてこちらを向いた。

「研究する」

「研究してどうなる?」

「別に。どうもならん。研究とはそう言うものだ、ただの知的好奇心による知的探求だ」

 俺は何故か苛立っていた。
別に蜻蛉洲が何かをした訳でも無いし、これも今に始まった事でも無い。
しかし、なんだかやりきれない。

「ただの趣味なのか……」

 俺がそう呟いた声音は、どこか不満が滲み出ていたのだろう。

「……お前になど言っても仕方がないが、世の役に立つかどうかは結果論に過ぎない。だが誰かが好奇心で探求したから、その結果を人々が享受できているのだ」

 言われてみれば魔法もそうだ。
学者や魔導士の知的探求の結果が、数々の魔法を発展させてきた。
リッチなどはその最たる者だ。

「なあ、蜻蛉洲」

「なんだ」

「あんたの研究で銀猫は甦らないか?」

「なに?」

 オニヤンマイザーが再び俺を見る。

「どういうつもりだ」

 そう言われると返事に困る。

「……別に倫理的な事など僕には関係ないが、それでも誰かれ構わず甦らせる事に僕は反対だ。人に限らず生き物は死ぬのだ。それが自然の摂理なんだ」

「……じゃあ、彼女を甦らせてくれているのにも、本当は反対なのか」

 俺は自分のパーティーメンバーでもある仲間を彼らに託している。

「反対だ」

 オニヤンマイザーは少しも逡巡する事無く、答えた。

「だが、僕たちは互いを尊重し、互いに不可侵的な立場を誓っている。百足と令子さんが勝手にやっている事だ。だから口出しはしない」

 オニヤンマイザーはそう言って、ヴァンパイアを担いだまま炎の中に消えて行った。
俺はそれをただ見送った。

「おい、何をしている。付いて来い」

 炎の向こうから蜻蛉洲の声が聞こえた。
俺は釈然としないまま、蜻蛉洲を追って炎の中へと入っていく。

 反対側には出入り口があった。
他の者はここから逃げられたのか。
俺は蜻蛉洲を追って建物から外へと出た。
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