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四四九
どうだ!?
俺は辺りを見回した。
確かに火は消えている。
まだわずかに燃えている部分もあるが、それもこれ以上は燃えまい。
いずれ消える筈だ。
俺はオニヤンマイザーを見た。
「零点だ」
オニヤンマイザーは呆れたように言った。
俺は愕然とする。
「火で焼かれて消失する物が、お前の手によって消失したに過ぎん。意味があるのかこれは」
俺は自分の足場を見た。
瓦礫の山の上に、俺が一人で立っている。
もう一度辺りを見渡す。
野次馬たちが恐怖におののく目で俺を見ていた。
「まあ、僕たちは世界にとって侵略者だ。別に庶民の家がどうなろうが知った事では無いがね」
俺は何も視界に入らなくなっていた。
ただオニヤンマイザーの声だけが、やけに大きく耳の奥にまで届いていた。
「ただ、壊さなくても済んだ物を、わざわざ破壊する事が支配者の仕事ではあるまい」
「そんな、じゃあどうすれば!」
「そんな事は自分で考えたまえ。君は僕らの一員になったんだからな。まあ、やれと言ったのは僕なんだが」
そうして、オニヤンマイザーは大声で野次馬たちに言った。
「この家の所有者は生きているか」
ざわめく人垣の中から、女が一人前に出た。
「お前の家か?」
「は、はい」
女は酷く怯えながら答える。
「ヴァンパイアが暴れたので退治したが、悪い事をしたな。他に被害はあるのか?」
「家族が……」
女が泣き崩れながら瓦礫と化した家を指差した。
「逃げ遅れたか」
「化け物に操られるようにして、逃げずにその人に向かって行ったんです……」
チャームに魅せられたか。
俺が跳ね飛ばした奴らの中に、混じっていたのだろう。
ほとんど俺が殺したようなものだ。
俺はこれ以上無いほどに打ちのめされていた。
体はどこも痛くは無かったが、心は堪えられそうにない。
オニヤンマイザーはしばらく沈黙していたが、やがてアイアンシェルを呼び寄せた。
「おい、瓦礫をどけろ。人が居たら中へ運べ」
オニヤンマイザーは俺にそう指示すると、女に向き直った。
「しばらくはこれで宿に泊まれ。一月経ったらまたここへ来い」
そう言って羊皮袋を取り出すと、女に手渡した。
金か。
金で失った物が返ってくる訳では無い。
だが金は必要だ。
オニヤンマイザーは間違っていない。
「一月……ですか?」
女が涙を拭いながら、オニヤンマイザーを仰ぎ見る。
「そうだ。その位かかる」
「……わ、わかりました」
女は小さな声でそう言うと、とぼとぼとどこかへ去って行った。
建物を再建するつもりか。
だが、彼らにとってはこんな石造りの家に一ヶ月も必要ないだろう。
「余計な心配は要らん。お前は早く作業を完了させろ」
オニヤンマイザーはピシャリとそう言って、アイアンシェルへと消えていった。
銀猫の遺体を担いだまま。
俺は辺りを見回した。
確かに火は消えている。
まだわずかに燃えている部分もあるが、それもこれ以上は燃えまい。
いずれ消える筈だ。
俺はオニヤンマイザーを見た。
「零点だ」
オニヤンマイザーは呆れたように言った。
俺は愕然とする。
「火で焼かれて消失する物が、お前の手によって消失したに過ぎん。意味があるのかこれは」
俺は自分の足場を見た。
瓦礫の山の上に、俺が一人で立っている。
もう一度辺りを見渡す。
野次馬たちが恐怖におののく目で俺を見ていた。
「まあ、僕たちは世界にとって侵略者だ。別に庶民の家がどうなろうが知った事では無いがね」
俺は何も視界に入らなくなっていた。
ただオニヤンマイザーの声だけが、やけに大きく耳の奥にまで届いていた。
「ただ、壊さなくても済んだ物を、わざわざ破壊する事が支配者の仕事ではあるまい」
「そんな、じゃあどうすれば!」
「そんな事は自分で考えたまえ。君は僕らの一員になったんだからな。まあ、やれと言ったのは僕なんだが」
そうして、オニヤンマイザーは大声で野次馬たちに言った。
「この家の所有者は生きているか」
ざわめく人垣の中から、女が一人前に出た。
「お前の家か?」
「は、はい」
女は酷く怯えながら答える。
「ヴァンパイアが暴れたので退治したが、悪い事をしたな。他に被害はあるのか?」
「家族が……」
女が泣き崩れながら瓦礫と化した家を指差した。
「逃げ遅れたか」
「化け物に操られるようにして、逃げずにその人に向かって行ったんです……」
チャームに魅せられたか。
俺が跳ね飛ばした奴らの中に、混じっていたのだろう。
ほとんど俺が殺したようなものだ。
俺はこれ以上無いほどに打ちのめされていた。
体はどこも痛くは無かったが、心は堪えられそうにない。
オニヤンマイザーはしばらく沈黙していたが、やがてアイアンシェルを呼び寄せた。
「おい、瓦礫をどけろ。人が居たら中へ運べ」
オニヤンマイザーは俺にそう指示すると、女に向き直った。
「しばらくはこれで宿に泊まれ。一月経ったらまたここへ来い」
そう言って羊皮袋を取り出すと、女に手渡した。
金か。
金で失った物が返ってくる訳では無い。
だが金は必要だ。
オニヤンマイザーは間違っていない。
「一月……ですか?」
女が涙を拭いながら、オニヤンマイザーを仰ぎ見る。
「そうだ。その位かかる」
「……わ、わかりました」
女は小さな声でそう言うと、とぼとぼとどこかへ去って行った。
建物を再建するつもりか。
だが、彼らにとってはこんな石造りの家に一ヶ月も必要ないだろう。
「余計な心配は要らん。お前は早く作業を完了させろ」
オニヤンマイザーはピシャリとそう言って、アイアンシェルへと消えていった。
銀猫の遺体を担いだまま。
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