見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
454 / 826

四五四

 俺は愕然とした。
だったら何の為に銀猫を手に掛けたのか。
何の為に民家を破壊し、人々を巻き込んだのか。
ヴァンパイアはこの世から消せないと言うのか。

 俺は頭の中が真っ白になっていた。

「……とか何とか思ってるんだろ。判りやすいよな、ウチの行動隊長は」

 オオムカデンダルがつまらなさそうに言う。

「あら良いじゃない。私はそう言う真面目な男、嫌いじゃないけど」

 今度は令子が冷やかすように言った。

「話は最後まで聞け。人の話を良く聞かなかったせいで命を落としたヤツも多い」

 蜻蛉洲が冷静な口調で言った。

「復活したのは形だけだ。顔の形をした皮膚と言えば良いのか」

 蜻蛉洲自身、どう形容して良いのか判らないと言った雰囲気だ。

「見た方が早い」

 銀猫はそう言うと、やおら諸肌を脱いだ。
相変わらず気っ風が良い。

「ほら見てみろ」

 銀猫はそう言うが、なかなか直視しにくい。

「何を恥ずかしがっている。見れば一目瞭然だろ」

 銀猫があまりにも堂々としているので、恥ずかしがっている事自体が悪いような気になる。
不思議なもんだ。

 俺は意を決して銀猫を見た。

「これは……」

 俺は思わず声を漏らした。
確かに銀猫の左胸に人の顔のような物がある。
だが、ハッキリと顔があると言えないのにも理由があった。

 まず、小さい。
子供の物よりももっと小さい。
赤子くらいの大きさだ。
しかし、その造りは明らかに成人男性の形をしている。
それが逆に不気味さを増していた。

 そして、両目と鼻筋しか無い。
眉も口も無く、鼻も鼻筋はあるものの、鼻頭は無い。
したがって鼻の穴も無かった。

 なんなんだこれは。

「推察するに、ヴァンパイアの影響が強すぎるんだろう。もう本体は居ないにも関わらずその痕跡だけは残している。しかも、ホンのわずかな時間しかこの格好では居なかったのにだ。恐るべき生命力だ」

 蜻蛉洲が冷静な口調で言うのと裏腹に、興味深そうに銀猫の胸を凝視した。
あんまり見るなよ。

「だが、さっきも言ったように今ところ形だけだ。意思も無さそうだし目も開かない。透過して調べたが脳も無いから本当に形だけだ。恐らくな」

 恐らくって、可能性はゼロでは無いのか。

「こんな魔法だモンスターだなんて言う世界の常識は、流石に我々の予想の外側だからな。絶対とは言えない。だが、恐らく大丈夫な筈だ」

 何だか蜻蛉洲が断言しないと逆に不安になるが、まあ今はそれで良しとしよう。

「そして、甦ってもらった二つ目の理由は」

 もらった?
あの蜻蛉洲がもらったと言ったのか。
何を企んでいる。

「銀猫にスラム地区を含むあの一帯を仕切ってもらう」

 なんだと。
どう言う事だ。

「お前では任せられないとさ」

 銀猫はそう言って笑った。
冗談言ってる場合か。
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

公爵様、甘やかしが過剰です!

星乃和花
恋愛
王都の花屋で働くリネットは、ある日偶然、公爵アルベルトの目に留まる。 それ以来、公爵家からの注文、送迎、差し入れ、特別扱い――なぜか彼に甘やかされる日々が始まってしまった。 美貌も地位も権力も持つ完璧な公爵様は、社交界では鮮やかに無双するのに、リネットにだけは驚くほど優しい。 「君がいい」と真っ直ぐに想いを伝えられ、おろおろしながらも少しずつ惹かれていくリネット。 身分差に戸惑い、怖さに立ち止まりながらも、花屋の娘は公爵様の隣へ踏み出していく。 甘々溺愛・じれきゅんたっぷりの身分差ラブコメ。 ♢こんな"好き"をお持ちの方へ • 強くて余裕のあるヒーローが好き • 溺愛ものが好き • ヒロインがわたわたするラブコメが好き • 安心して読める甘い話が好き • 「周囲公認」の恋愛が好き ♢毎日21時30分更新ー全8話+後日談

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

男装の薬師は枯れぬ花のつぼみを宿す

天岸 あおい
ファンタジー
久遠の花と呼ばれる優秀な薬師の一族。 そんな彼らを守り続けていた、守り葉と呼ばれし者たち。 守り葉として育てられた子供・みなもだったが、ある日隠れ里を襲われ、生き別れた姉・いずみや仲間たちとの再会を夢見て薬師として生きながら、行方を捜していた。 そんなみなもの元へ現れた、瀕死の重傷を負った青年レオニード。 彼との出会いがみなもの運命の歯車を動かしていく―――。 男装の麗人で、芯が強くて自分の手を汚すことを厭わない主人公と、そんな一筋縄ではいかない主人公を一途に想う、寡黙で真面目な青年の物語。 R18ではありませんが、後半は大人向けの展開になっています。 ※他サイトで公開していたものを改題・改稿しております。 ※今作は非BLです。期間限定で掲載致します。

二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される

七海美桜
恋愛
旧タイトル:五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです! フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。 けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」 侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。 その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。 けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。 揺らぐ心と、重ねてきた日々。 運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。 切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。 最後まで見届けていただければ幸いです。 ※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます にて、親世代の恋愛模様を描いてます。