見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四六一

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「全滅させるだあ……?」

 憲兵隊長の顔が紅潮する。

「早く掛からんか貴様らあっ!帝国憲兵隊の恐ろしさを教えてやれえっ!」

 憲兵隊長が叫ぶと同時に剣を抜く。
その切っ先がオニヤンマイザーを指した示した。

「おおおおおー!」

 半ば開き直った隊員たちは、一気呵成にオニヤンマイザーへと向かって行った。

 ガキン!
ギイン!
ガッ!

 憲兵隊員の剣が雨あられとオニヤンマイザーを打ちのめす。

 そう。
打ちのめしていた。
斬るでも無く、突くでも無い。

 斬れないのだ。
オニヤンマイザーの硬い体表は、まるで鎧のようだった。
どんな鋭利な刀剣でも斬るのは無理に思われた。
それどころか傷を付ける事さえ可能かどうか。

 巨大な戦斧かハンマーなら、ひょっとしたら可能性はあるかもしれない。
それでも、その装甲を破れるかと言う話では無い。
傷を付けられるかと言う話である。

「どうした。その程度か?まあやる前から判ってはいた事だが」

 オニヤンマイザーはその攻撃の嵐の中を、悠々と歩いた。
全く、ただの少しもオニヤンマイザーの歩行速度は落ちない。

 結局止められないのだ。
このままではオニヤンマイザーは、憲兵隊長をぶっ飛ばしてしまうだろう。
最悪殺しかねない。
いや、たぶん殺してしまう。

 そうなれば、せっかく回避できた帝国との全面戦争が始まるのは確定だ。
その結果が、どちらが勝つ事になるとしても、帝国内は大混乱になるのは目に見えている。
この人たちも、子供も老人も、みんな被害を被るのは間違いないだろう。

 その混乱に乗じて、他国が反旗を翻す可能性も十分にある。
いずれ通る道とは言え、それが今とは早すぎないか。

 がしっ!

 いつの間にかオニヤンマイザーは憲兵隊長の下へとたどり着いていた。
しっかりと隊長の脚を掴まえている。

「な、何をする!?」

 憲兵隊長は慌てて振り払おうと、オニヤンマイザーを蹴った。
だが驚異の握力で掴まれた脚は、ちょっとやそっとでは自由に動かす事もままならない。

「く……っ!動かん!馬鹿力めっ!」

「君は少しばかり態度が大きいな。まずは庶民の高さまで降りて来い」

 オニヤンマイザーはグイと脚を引っ張った。

「うおあ!」

 なすすべも無く、憲兵隊長は簡単に馬から引きずり下ろされた。
これ以上無いと言う馬鹿力だった。
洗濯物を取りこむかの如く、憲兵隊長は片手で地面へと引きずり下ろされたのだ。

 どさっ!

 背中から地面へと落馬した隊長が、慌ててオニヤンマイザーを仰ぎ見た。

「き、貴様……!」

「ふむ。いささか低すぎだが、君はその高さからやり直す方が良いな」

 オニヤンマイザーは隊長を見下ろしながら冷たくそう言った。
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