見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四六八

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 とりあえず今日やる事はもう無いらしい。
俺と秋津洲はメタルシェルに乗り込むと、またミスリル銀山へと戻った。

 最近は頻繁に行ったり来たりしている。
お陰で街の連中も、メタルシェルを見ても前ほど騒がなくなってきた。
子供など、笑いながら手を振って、どこまでも追ってくる始末だ。
良いのかこれで。

 基地に戻り広間に顔を出す。

 がちゃ

 誰もいない。
珍しいな。
こんな事はあまり無いんだが。

「レオさん」

 管理人が話し掛けてきた。
これも珍しい。

「皆さんは地下においでです。レオさんも顔を出すようにと」

 オオムカデンダルか。
今度は何をさせようと言うのか。
俺は言われるままに地下へ向かった。

「おお、来たか」

 部屋に足を踏み入れるよりも早く、オオムカデンダルが俺を見つけた。
早いな。

「これを見てみろ」

 オオムカデンダルがコインを俺に手渡す。

「なんだこれ……」

 見たことも無いコインだ。
材質も硬くて軽くて、金貨とは明らかに違っている。
いや、銅貨や銀貨とも違っていた。

「まさかこれ……」

 俺はコインを目の高さに掲げると、繁々とそれを見つめた。

「そうだ。これがジョルターだ」

 やっぱり。
これか。
薄くて軽くて、あんまりありがた味が無いな。

「材質なんかどうでもいい。いや、良くないが、別に金である必要などない。これは銅にニッケルを混ぜた物だ。後は亜鉛とスズだな」

 何だって?
ニッケル?
聞いたことも無い。

「地面に深ーく潜ってるからな。俺たち以外に取り出せるのはモンスターくらいだろ。そんなモンスターは居ないだろうが」

 誰も取り出せない金属なのか?
逆に金よりも高価なんじゃないのか?

「まあ、それもある。だが、それよりも大量にあるってのが利点だ。まあ、金も大量にあるんだがな」

 そうなのか。

「そうなんだよ。まあこの世界の人間に言っても始まらんが、この世界の地面の構造は俺たちの世界とほぼ同じだ。だから金も大量にある。ただ、金と言うのは重たいんだ。星が造られるときに一番深い所に集まってる。だから誰も取り出せない。取り出せるのは火山活動などで地表近くまで上がって来たヤツだ」

 チンプンカンプンだが黙っていよう。
以前は面倒だから説明はしない、と言われたもんだ。
だが最近は教えてくれる事が増えてきたように思う。
以前よりは信用されているのかもしれない。

「お前も少しは知識を身に付けろ。馬鹿には世界征服は務まらん」

 オオムカデンダルはそう言って、俺の額を軽く叩いた。
やはり一員として扱っていると言う事のようだ。

 まあ、あまり悪い気はしない。

 あれ?
でも待てよ。
ネオジョルトならその金も取り出せるんじゃ無いのか。

 オオムカデンダルがニヤリとして振り返った。
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