見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四七三

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 どこまで本気なのか。
紙と糸。
それに生地。

 考えてみればどれも人々の生活に最も近い部分だ。
ただ紙がそこまで重要かと言われれば、少し考える。

 本にするか手紙にするか。
あとはスクロールや手記をつけるくらいか。
人類にとっては確かに大事だが、庶民の暮らしにはどうかとも思う。

「ふふ。なかなか良い視点だな。紙はこれからだ」

 蜻蛉洲が言った。
これからとは?

「紙がどれほど便利かは、これから知ることになる。そしてそれを知ったら元の生活には戻れない」

 紙が?
判らんな。

「ただ、今のままでは駄目だ。もっと高い品質でなければな。そしてそれを大量に生産出来なければな。しかも安価に。誰でも買える日用品でなくては」

 言っている事は判るが、何故紙なのかは俺には判らなかった。
まあ、いいさ。
俺が考えても彼らの考えには到底及ばないのだ。
彼らがそうだと言うのなら、俺はそれに従うまでだ。

 とても秘密結社内で交わされる幹部の話とは思えんな。
もっと魔法とか兵力とか、そう言う話がメインになるものとばかり思っていた。

「ふ。そんなものよりも千倍役に立つ話だ」

 秋津洲が鼻で笑った。

「お前はどうする?まあ、何もしなくても構わんが、希望があるならどこか視察でもすれば良い」

 オオムカデンダルが俺に言った。
視察か。
確かに自分の組織が何をしようとしているのか知る事は必要だろう。
けど、畑仕事に製造業じゃあな。
その仕事は俺の知る限り、商人や役人の仕事なんだが。

 俺は田舎の出だ。
牧畜なんかが馴染みはあるが、帝国のお膝元で牧畜は出来ないだろう。
都会には餌も草原も無いからだ。
第一、牛なんか飼ったら付近の住民から死ぬほど文句を言われかねない。
奴らの臭さは軽い兵器だ。

「それはいずれやる。今は簡単なもので、優先順位の高いものからやっている。いずれ漁業も林業も、養殖業もやる」

 秋津洲が言っているそばから、俺は訳が判らなくなった。
こんな場所で漁業?
港町でも無ければ無理だろ。
海でも作る気なのか。
俺は思わず笑った。

「阿保か。作るのは魚だ」

 言わなければ良かった。
後悔したがもう遅い。
魚は作れるのか。
そうなのか。
知らなかった。
普通は作れないがな。

「軌道に乗るまでどのくらいだ?」

 オオムカデンダルが尋ねた。

「予測でしかないが、上手くいけば半年。遅くても九ヶ月だ」

 秋津洲が答える。
半年だと。
半年で効果が表れるのか。
ジョルターと、この雇用の効果が。
俺は正直驚いた。

「……俺は全部視察してみようと思う。正直何が行われようとしているのか。さっぱりだ」

 俺は正直に言った。
オオムカデンダルが何故か嬉しそうに笑う。

「ふふ。それでいい。良く見てこい。我々が何をしようとしているのかをな」
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