見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四七九

「見せてみるがいい。どの程度の物なのかを」

 バーデンが挑発する。
良いだろう。
どの道、やらなければならないのだ。

「シッ!」

 俺は短く息を吐くと同時に踏み込んだ。
馬の両前脚を揃えて蹴った。

 ゴッ!

 鈍い音を経てて、馬の両前脚が真横に滑る。
そのまま体勢を崩して馬は横倒しに倒れ込んだ。

「ぬぅ?」

 バーデンは素早く馬の転倒を察して、馬上から飛び降りた。

 どうっ!

 鈍い音を経てて馬が地面に横たわる。
それを挟んで俺とバーデンが対峙する。

「これは……さっきまでとは違うな」

 バーデンは興味深そうに俺を視線で舐め回す。
気味の悪いヤツだが、倒してしまえば関係無い。
構わず攻勢を維持する。

「サフィリナックスヒューイット!」

 手首の装甲の隙間が開くと、そこから触手が伸びる。

 ヒュンヒュンヒュンヒュン

 俺は触手をムチのように振り回すと、隙を狙ってバーデンを打つ。

「ふふふ。知っているぞ。猛毒のムチなのだろう?当たったら即死だそうだな?」

 そんな事まで知っているのか。
事前の下調べは念入りに行ったようだな。
些細な情報まで良く集めている。

「実に興味深いな。他にももっと見せてみるがいい」

 バーデンが攻撃を避けながら言う。
その口もとは笑っている。
この野郎。

 俺の攻撃をこれだけかわし続けるだけでも、将軍の戦闘能力がうかがい知れる。
触れただけでも死ぬと判っている攻撃を、これだけかわし続けるのは並大抵の精神力ではない。

「サフィリナックスブレード!」

 今度は格闘戦を挑んでみるか。
俺の両腕と両足に、光の線が浮かび上がる。

「とあっ!」

 一気に距離を詰めて手刀を放つ。

「む」

 バーデンはそれを察知して身をかわした。
マントが翻る。
マントの下には将軍が身に付けている、藍眼鉱の鎧が見えた。

 厄介だな。
将軍だけでも手を焼くのに、まだ兵士はほとんどそのまま残っている。
今はこの地形のお陰で何とかなっているが、これが平原のような場所なら状況はもっと厳しかった筈だ。

「その手足は触れると斬れるのだったな?危ない危ない」

 バーデンが目を細めて言った。
これもバレている。
いや、どうせ一度使えば知られるのだ。
その程度は問題ない。
ただ、最初から警戒されていては、初撃はなかなか決まらないだろう。

 俺は構わず攻め立てた。
左右の手刀を連続で繰り出していく。
バーデンは初めて剣を抜いて、これを受け止めた。

 ガキィン!

「ふむ。藍眼鉱の剣なら受け止められるな」

 バーデンが確認するように言う。

「ち……っ!」

 俺は舌打ちした。
さすがは藍眼鉱と言うしかない。
ミスリル銀と並んで希少とされるだけの事はある。
藍眼鉱は藍眼鉱でしか加工できない。
その為に大量の藍眼鉱を消費する。
研磨するのに必要なのだ。
その為に藍眼鉱の装備類は、価格が青天井である。
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