見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四八〇

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「どこの馬の骨かは知らんが、なかなか強い。将軍になれてもおかしくない実力だ」

 バーデンが言う。

「どうだ。そんな盗賊団など足を洗って、帝国に付け。その方がお前の為でもある」

 今度は懐柔か。
そんな言葉を信じると思うのか。

「疑っているのか?私は嘘は言わん。私が直接皇帝陛下にお前を推薦してやる。待遇も盗賊団など比べ物にならんぞ」

 バーデンが俺を試すように見た。
確かに帝国の将軍ともなれば、その待遇はとんでもない物だろう。
一般の庶民が一生掛かる物を、十回繰り返しても達成できまい。

「……お前は勘違いしている」

「ほう……?」

 俺の答えにバーデンが眉を上げる。

「一つ、俺たちは盗賊団などではない。二つ、待遇や金など大した問題ではない」

 俺はバーデンに向かって一本づつ指を立てて説明した。

「強がりは止せ。金の要らない人間などおらん」

「……三つ、俺は人間ではない」

「なに?」

 初めてバーデンが表情を大きく崩した。

「まさか、人間の姿に変われるモンスターだとでも?」

「アンタには言っても判るまい。俺は改造人間だ」

「カイゾウニンゲン……?」

 バーデンが、何だそれはと言う顔をした。
やはり、言っても判る筈がないのだ。

「……確かに、何を言っているのか判らんな」

 バーデンはアッサリそれを認めた。

「盗賊団で無いなら、何なのだ」

「俺たちは世界征服を目論む秘密結社『ネオジョルト』だ。覚えておくがいい」

 俺の言葉にバーデンは破顔した。
無理もない。
冗談だと思ったらしい。

「世界を征服するだと?カイゾウニンゲンとやらは冗談も上手いのか」

 そう言ってバーデンが笑う。
後ろの兵士たちからも笑いが起こった。

「果たして、冗談で帝国正規軍の前に立ちはだかると思うか?」

 俺は真っ直ぐバーデンの顔を見た。
俺の表情は真剣その物だったが、マスク越しにそれが伝わるかは謎だ。
だがバーデンは、そんな俺を見て笑うのをやめた。

「帝国を差し置いて世界の征服など、例え冗談でも許されんぞ」

「冗談などではない。本気だ」

 そう、本気だ。
オオムカデンダルも、蜻蛉洲も、彼らを見ていれば判る。
ネオジョルトは本気なのだ。

「判るか?金や待遇など、俺から見れば些細な事なのだ」

「貴様……本気か?」

 バーデンの眼差しが鋭い物へと変わる。

「そうか……この街を独立させようとするのも、貴様らの計画と言う事か」

 俺はその問いには答えなかった。
答えても意味などない。
答えても、答えなくても、それが意味する所は同じだからである。

「貴様の口から名乗りを聞こう。名乗るが良い」

 バーデンが俺に言う。

「秘密結社ネオジョルト行動隊長」

 俺は改めて胸を張った。

「その名を、怪人サフィリナックス」
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