見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四九二

 そんな勇者の家系もあるのか。

「そうは言っても、世に魔王などと言う存在はそう頻繁に現れる訳でも無い。百年、二百年は現れないと言う平和な時期もあるのじゃ。その平和な期間に勇者として生まれた者は、冒険に出る事も無く、戦いに身を投じる事も無い」

「なるほどね。仕事が無いって訳だ」

 ソル皇子の言葉にオオムカデンダルが相づちを打つ。

「まあ、貴族だからの。仕事が無い訳では無いが、それは別に勇者本来の仕事と言う訳でも無いからの」

 平和な時の勇者は貴族として暮らしているのか。
しかし、勇者と言えば冒険者にとって憧れの存在だ。
あのバーデンの姿からは勇者のイメージに程遠い。

「自分が勇者であるにも関わらず、その力を奮う機会が無い事を不満に思っておったようじゃ。世の中には秘密裏に処理されている案件と言うのがいくつもある。処理しきれなかった案件が世間の知っている事件じゃな。ドラゴン討伐や魔王侵攻などがそうじゃ」

 つまり隠しきれなかった事件と言う事か。

「大体は世には知られず処理されておる。その役を主に担っているのは軍であり、将軍たちだが、それでも難しいとなると勇者の出番と言う事になる。バーデンはその役目を果たし、どうせなら自分が将軍になった方が都合が良いと考えたようだの」

 都合が良い?

「つまり退屈しておったのだ。軍が処理してしまうと、自分の出番は無くなる。だから自分が将軍として軍に居れば、その前に参加できると言う訳じゃ。貴族だからのう、出自は明らかだし腕前も申し分ない。軍も皇帝陛下も賛成じゃった。特に兄上がの」

 なるほど。
そんな話があったのか。

「しかし、申し上げ難いのですが、バーデン将軍のやり方はとても勇者とは思えませんでした。西の繁華街を独立させようと言う我々が言うのも変な話ですが……」

 俺は本当に言い難かった。
帝国の皇子に街を勝手に独立させておいて、お前のとこの将軍はおかしいぞと言っている訳である。
別に言わなくても良かった話かもしれない。

「そうだぞ。なんだお前のとこのあの将軍は。街を護る気があるのか!まったくけしからん。将軍の風上にも置けん奴だ」

 俺の気にしている事を十倍に強めてオオムカデンダルが言った。
心臓に毛が生えてるのか。
いや、きっと心臓なんかとっくにあるまい。

「これは手厳しいのう。モンスター相手ならばなんの問題も無いんじゃが、街でも同じように振る舞うのが頭の痛い所じゃ」

 ソル皇子も知ってはいたのか。

「数年前に東の山地にワームが出現した事がある。バーデンはそれを討伐する為に村を二つ犠牲にしたのじゃ。もちろんこの事は秘密になっておるがの」

 ソル皇子の言葉に俺は愕然とした。
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