見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五〇五

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『二』

「く……っ!プ、プロテクションッ!」

 苦し紛れか、計算ずくか。
バーデンはプロテクションを唱えた。
目に見えない壁が、バーデンと俺の間に発生する。

「うおっ!?」

 俺はその見えない壁によって、引き剥がされるようにバーデンから遠ざけられる。

「くそっ……!」

 俺は狼狽した。
プロテクションにこんな使い方があるとは。
いや、それよりも魔法職の呪文も、聖職者系の神聖魔法も、どちらも使えると言う事に驚く。
不得意な分野は無いのか。

「ふ……ふははは!危なかったな。まさかこのレベルの戦いで、首を絞めるなどと言う原始的な方法に出るとは」

 バーデンは転がりながら距離を取ると、自らの首をさすりながら言った。
完全に警戒している。
もう、首を取る事は無理だろう。

『一』

 もう時間が無かった。
出来る事は無い。

 いや……まだだ!
出し惜しみをするなとオオムカデンダルは言った。
俺は『やるだけやろう』とオオムカデンダルに言ったのだ。
やらなければ、また嫌味を言われる。

「スクリューシェイブクロウッ!」

 振り上げた右手の手首が高速回転する。

 ギュルルルルルルルルルッ!

 俺はなりふり構わず回転する指を、プロテクションに叩き付けた。

 ドガアッ!
 ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリッ!

 バーデンの顔が緊張でこわばる。
恐れているのだ。
あんな表情は初めて見る。

『零』

 突然、全身の力が抜ける。
徐々にでは無い。
糸が切れた操り人形のように、本当に突然力が尽きた。

 バキイインッ!

 聞きなれない音を発てて、プロテクションが割れる音がした。
割れたか。
だが、俺にはもうまばたきする力も残っていなかった。

「く……くそっ……!」

 俺はその場で膝をついた。
その体勢でさえ体を支えられないほどだった。

 がくっ
ばたんっ!

 俺はその場にうつ伏せに突っ伏した。
駄目だ。
もう何も出来ん。

 この状況で、俺はさすがに諦めた。
オオムカデンダルに何と言われようと、指一本動かせないのでは出来る事は何もない。

「出し惜しみは……しなかったぜ。ザマミロ……」

 それを呟くのが精一杯だった。

「レオ!レオ!返事をしろ!おい!」

 カルタスの声が聞こえる。
駄目だ。
来るな。
作戦は失敗だ。
それを声に出す事さえ出来ない。

「ふ……ふふふ!はははは!脅かしやがって。だが確かに強敵には違いなかったな。それは認めよう」

 バーデンが立ち上がって近付いて来た。

「だが、俺の方が強かった!これだから戦いは辞められない。その為に将軍職に就いたのだ!」

 バーデンが俺を見下ろしながら言った。

「まったく、もう少しスマートにやれないモンかね」

 別の誰かの声が聞こえる。
この声は。

「だがまあ、『出し惜しみをしなかった』事だけは褒めてやる。良くやった」

 これは、オオムカデンダルの声だ。
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