見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五一三

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「いくら何でも、そりゃあ無いだろう」

 オオムカデンダルが言う。

「お前が部下をこんなにしたんじゃないか。仲間や隊を使うのが長けていると聞いたんだがな。意味が違ってたようだ」

 確かに。
これでは自分の都合の良いように使う、と言う意味でしか無い。
これまではバーデンの力だけで勝てたからそれでも問題が無かったのだろうが。

 だが今初めて、オオムカデンダルと言う脅威を前にして、勇者の化けの皮が剥がされようとしている。
独善的で自己中心的な本性が、仲間にも知れ渡ったに違いない。

「しょうがねえなあ。この一発で勘弁してやる」

 オオムカデンダルは呆れたような声でそう言うと、拳を握りしめた。
もう少し骨があると思っていたのかもしれない。
俺からすれば十分な相手だと思ったが、オオムカデンダルと比べるには、バーデンはまだ力不足だったようだ。

 相手が強いかどうかよりも、その内面を見ているように感じる。
少なくともオオムカデンダルは、これ以上バーデンに見るべき物は無いと判断したようだ。

「もう二度と、うちのシマに手を出すんじゃないぞ。次は容赦しないからな」

 オオムカデンダルはそう言って拳を振り上げた。

「く……くそっ!くそっ!くそっ!……ああ、これだけは……これだけはぁ……!」

 バーデンが胸元からペンダントを引きずり出すと、祈るようにそれを握りしめた。
なんだ?

 オオムカデンダルもそれが気になったのか、殴らずにその様子を見ている。

「これだけは嫌だあ……!嫌だあ!これだけは……!」

 いったい何だと言うのか。
バーデンの行動が良く判らない。
嫌だと良いながら祈っているようにも見える。
ハッキリ言って気味が悪い。

「……なんだそれは」

 好奇心に負けてオオムカデンダルが尋ねた。
早く決着をつけてしまえ。
俺は何故か不安を感じてそう念じた。

「くそっ!……お前に殺られるくらいなら……嫌だがッ!嫌だが殺られるくらいなら!……やってやる!やってやるぞ!くそっ!」

 バーデンの様子がおかしい。
いや、もともとおかしかったかもしれないが、何と言うか鬼気迫る感じになっている。
駄目だ。
早くトドメを刺せ。
この感じは冒険者の勘が、駄目だと言っている。

 バーデンは息を荒くしながらペンダントを引きちぎった。

 ブチッ

「うわあああああっ!くそっ!くそっ!お前のせいでこんな……やってやるからな!お前のせいだ!ぶっ殺してやる!」

 バーデンはそう言うと、ペンダントを強く握りしめて自らの額に押し当てた。

 カッ!

 瞬間的に目映い閃光が辺りを照らす。
バーデンの体も赤く光り輝いた。
赤いと言うよりも黒い。
赤黒い炎のような光が、バーデンを包むようにゆらめく。

「まだ何かあるのか。面白い」

 オオムカデンダルが嬉しそうに呟いた。
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