見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五二六

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「ぎにゃああああ!」

 ニーズヘッグの咆哮が、センチピーダーに当たる。
センチピーダー全体がニーズヘッグの声で振動していた。

 熱いのだ。
喉の入り口辺りに、灼熱の物体が入り込んでいる。
ニーズヘッグは酸を吐いているが、ファイヤーボールのようなブレスは吐いていない。
口の中にこんなに熱い物が有る事自体、ニーズヘッグにとっては異常事態に違いなかった。

「ぎしゃあっ!」

 喉の奥から酸が込み上げてくる。

 じゅああああ!

 センチピーダーはもろに酸を被った。
表面からもうもうと煙が上がる。

「お、おい!」

「うはははは!面白くなってきたな!」

 どこが面白いんだ。
俺の心配をよそに、オオムカデンダルは笑っていた。

「どっちが先にくたばるか、勝負だぜ!」

 冗談じゃない。
他に方法はあるだろう。
何故こんな方法を取るんだ。

「他にどんな方法があるんだよ。言ってみろってさっきから言ってるだろ」

 例えばワイバーン戦で使った、技はどうなんだ。
蜻蛉洲でさえ使うなと言っていた禁断の技だ。
あれならいくらでもやれそうではないか。

「あー、あれなあ。あれは、その、ちょっと無理だ」

 ちょっと無理?
いつになく歯切れが悪いな。

「あれは蜻蛉洲にロックされてるんだよ。あの一件でマジギレしやがって。ホントに肝っ玉の小さいヤツだ」

 ロックされてる?
蜻蛉洲はあの兵器を本当に嫌がっているのか。
確かにあの時も、相当怒ってはいたが。
地球を破壊する気かとか何とか。

 じゃあ余計にヤバイじゃないか。
いざとなればあの武器があるからと、どこか安心していたが、こうなっては早く何とかしなくては。

 このままでは本当に溶かされてしまう。

「何言ってやがる。ここが、気合いの見せ所だろ?」

 オオムカデンダルは俺の心配などどこ吹く風である。
彼の神経はどうなっているのか。

 突然、レッドランプが点灯した。
最近では見慣れた、警告の文字が映し出される。
またか。
安全に戦う事は出来んのか。

「安全な戦いなどあるかよ」

 オオムカデンダルは更に操縦桿を引いて、ペダルを踏み変えた。

 摂氏三九〇〇度。
何だこれは、温度なのか。
聞いた事の無い温度だ。

「アルミニウムも燃え出す温度だ。そろそろニトロが爆発した時と同じ位になるぞ」

 オオムカデンダルが何か言っている。
何を言っているかはもう判らないし、どうでも良かった。

 操縦席の中の温度はゆうに一〇〇度を越えている。
どうせどんな生き物も耐えられない温度だ。
改造人間以外には。

「まだまだ行くぜ!」

 オオムカデンダルのテンションは上がりっぱなしだ。

「……どこまでやる気なんだ?」

「へへっ、太陽と同じ温度まで上げてみようか」

「……それは何度なんだ?」

「そうさなあ。ざっと六〇〇〇度くらいか」

 俺はもう驚かなかった。
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