見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
527 / 826

五二七

 ニーズヘッグがのたうち回る。
中に居る俺たちも、散々に振り回されていた。
嵐の中の小舟でも、ここまでは揺れまい。

「火を吐くタイプのドラゴンならもう少し堪えられたのかもな。ま、そこがコイツの運の尽きよ」

 オオムカデンダルが可笑しそうに言う。
火を吐くタイプのドラゴンなら、それはそれでまた別の嫌がらせを思い付いていただろうに。
なかなかに性格がよろしくない。
今に始まった事ではないが。

「コイツの形状からして、このすぐ真上が脳の筈だ。脳があるならだが」

  ニーズヘッグは幼虫のような姿をしている。
いや今はもう、もっと長くなってミミズのようだったか。
ジャイアントワームが大ミミズと呼ばれていたが、コイツに比べたらどこが大なんだと言いたくなる。

 そのミミズのような形状から、口のすぐ真上が脳だとするなら確かにもう手の届く距離だ。
だか、目も耳も鼻もないこんなモンスターに脳があるのか。

「脳じゃ無くても何かはあるだろ。でなければあんなに嫌がったりしない」

 それは確かに。

 シュワアアアアアッ!

 センチピーダーの表面から白煙が立ち上る。
もうさっきからずっとだ。
これはセンチピーダーの温度が高温状態になっているからだけではない。

「くそ、ヤツも必死だな」

 オオムカデンダルが言う。

「また来るぞ」

 オオムカデンダルが言うと同時に再び酸が浴びせられる。

 シュワアアアアアッ!

 これである。
ニーズヘッグは何とかセンチピーダーを吐き出そうと大量の強酸を吐き続けていた。
洗い流そうと、押し出そうと、吐き出そうと、津波の如く酸を吐き続けている。
そのせいか、センチピーダーの表面温度が冷却されて思うように上がっていかないのだ。
さっきから五〇〇〇度の壁を破れないでいる。

 いや、五〇〇〇度だってもう十分に訳の判らない温度ではある。
しかし、それでもまだ活動しているニーズヘッグは尋常では無い。
さすがは龍の眷属か。

「……急がないとさすがに不味いか」

 オオムカデンダルがばつが悪そうに言った。
おい、やめろよ。
ここに来てそんな事を言うんじゃない。
目の中に映し出された警告の文字が、さっきから引っ切り無しだ。

 武器を使おうにも両手は踏ん張っていて使えない。
ミサイルも距離が近過ぎて自殺行為だ。
どうする。

「……何とか頑張って温度を上げる」

 オオムカデンダルが言った。
マジか。
我慢比べかよ。
俺の背中に冷たい物が走った。

 シュワアアアアアッ!

 外から酸が蒸発する音と、センチピーダーが溶ける音が、両方同時に聞こえてくる。
こんな所で、こんな死に方するのか。
歴史上、他に類を見ない死に方だな。
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します

黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。 断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。 ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている! 「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」 イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。 前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。 クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。 最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。 やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く! 恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

完 弱虫のたたかい方 (番外編更新済み!!)

水鳥楓椛
恋愛
「お姉様、コレちょーだい」  無邪気な笑顔でオネガイする天使の皮を被った義妹のラテに、大好きなお人形も、ぬいぐるみも、おもちゃも、ドレスも、アクセサリーも、何もかもを譲って来た。  ラテの後ろでモカのことを蛇のような視線で睨みつける継母カプチーノの手前、譲らないなんていう選択肢なんて存在しなかった。  だからこそ、モカは今日も微笑んだ言う。 「———えぇ、いいわよ」 たとえ彼女が持っているものが愛しの婚約者であったとしても———、

【完結】1王妃は、幸せになれる?

華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。 側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。 ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。 そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。 王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?