見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五三五

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「レオ、お前は中に入ってろ」

 オオムカデンダルがそう言うと、センチピーダーが俺を操縦席に放り込んだ。

 待ってくれ。
俺も、俺にも戦わせてくれ。
そう言ったつもりだった。
だが実際には糸の切れた操り人形のように、操縦席でぐったりするだけだった。
声も出ない。
指さえ動かない。
クソッ!

 センチピーダーの入り口が閉じた。
俺はモニター越しにオオムカデンダルを見るしか無かった。

「さて。期待はしていないが、お前たちには聞きたい事がある。少し付き合ってもらおうか」

 オオムカデンダルはそう言うと女を見上げた。

「……お前の事は知っている」

「へぇ」

 女の言葉にオオムカデンダルは下手な演技で驚いてみせた。

「じゃあ、慎重に行かないとな」

 オオムカデンダルが一歩前に出た時、メルドルムが割って入った。

「待て貴様ら!何を勝手にしている!」

 他の将軍も止める気配は無い。
全員同じ考えか。
だが俺から見れば、どう見ても邪魔でしか無い。
女の方は判らんが、少なくともオオムカデンダルを止める事など将軍たちには無理だ。

「野次馬がうるさいが気にするな」

 オオムカデンダルが言う。

「判った」

 女がそれに答えた。
こっちも同じ意見か。

 たっ!

 オオムカデンダルが軽くジャンプする。
あっという間にニーズヘッグに登り詰める。

 しゃらっ!

 女が剣を抜いた。
魔導士じゃないのか。

「……」

 オオムカデンダルはそれをじっと観察している。

「どうした?来ないのか?」

 女が剣を構えたまま言った。

「……いや。今から行くぜ」

 言うと同時にオオムカデンダルが踏み込んだ。
速い。
一瞬だ。

 女はそれをカウンター気味にかわして、背後へ回った。
かわすのか、あのスピードを。
そして少し間合いを取ってオオムカデンダルに向き直る。

「攻撃はしないのか?」

「攻撃が通る場所を探している。通じないのに攻撃する意味は無い。無駄に隙を献上するだけだ」

「へぇ」

 オオムカデンダルが今度は何故か少し嬉しそうに返事をした。

「動きは完全な素人なのにな……何故避けられたのか是非とも知りたくなってきた」

 オオムカデンダルは再び踏み込んだ。
彼の動きの特徴はこれだ。
タイミングが特段に掴みづらい。
話の途中かと相手が思うようなタイミングで、不意を突くように動き出す。

 初動は全く察知できない。
突然動き出すのだ。
まるで虫のような動きだ。

 女はその動きも、ぎこちない動きでかわして見せた。
またかわした。
俺は夢でも見ているのか。

 判らん。
なんであんなへっぴり腰でオオムカデンダルの攻撃をかわせるのか。
剣士などの戦闘職の動きではない。
しかし魔法職にオオムカデンダルの攻撃がかわせるとも思えない。
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