見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五四四

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 俺の見ている前で、男はひょいとミーアを肩に担ぎ上げた。

「……うぅ、ミーア……みー……あッ!」

 俺は瞬間的にミーアを取り返しにかかる。
男はそれを見越していたか、ジャンプの体勢に入っている。

 しゃっ!

 俺は男を捕まえるべく手を伸ばした。

「!?」

「…と、思うだろ?まだまだ甘いなクラゲ君」

 男は俺から逃れるのでは無く、逆に前へと跳躍した。
突っ込んでいた俺の顔の真横を、ミーアを担いだ男がすれ違い様にそう囁いた。

「はっはっはっはっ!さらば……だっ!?」

 男の高笑いはすぐに止んだ。
俺の左手が、ガッチリと男の足首を掴まえていたからだ。

「な!?馬鹿な!?」

「オオオオオオッ!ミーアアアアアアッ!」

 俺は力任せに男の足を引き戻す。

「ぎゃああああっ!」

 男は絶叫を上げた。

 ぶぎっ!

 聞き慣れない音がする。
そして、手から手応えが消えた。
見ると、俺の手には男の足が握られていた。
ちょうど膝から下辺りか。
膝の靭帯らしき物が引きちぎれているのが判る。

「ぐっ……!くくっ、貴様ぁ……!」

 男は苦悶の表情を浮かべながら、声を漏らした。
男はそれでも片足で立っている。

「……ミーアを……返……せぇ」

 俺は男に向き直る。

「くそっ、貴様みたいな格下に足を持っていかれるとは……不覚」

 男の顔には後悔が表れている。
俺を侮った事を悔やんでいるのだろうが、もう遅い。

「だが、女は貰っていく!ここは引き分けにしておいてやる!」

 男はそう言うと俺を一瞥して、そのまま再び跳躍した。
逃がさん。

 俺はそのまま走って男を追いかける。
かなりのスピードが出ている筈だが、なかなか差が縮まらない。
男のスピードもかなりの物だと言う事が判る。

「おっと、待てよ。どこへ行くんだ」

 男の行く手にオオムカデンダルが現れた。

「ちっ!ムカデか!」

「持ち物検査だ。止まれ」

 じゃららっ!

 オオムカデンダルはそう言うとムカデンダルヒューイットを伸ばして地面に垂らした。

「くっ!」

 男は苦し紛れにジャンプした。
それしかあるまい。
背後から俺に追われ、行く手にはオオムカデンダルが待ち受ける。
逃げ場を宙に求めるしかない。

「へっ、やっぱりもう手は無いみたいだな」

 オオムカデンダルは少し残念そうに言うと、ムカデンダルヒューイットを男へと振った。

 じゃらららららららっ!

 音を発てて蛇腹のようにムカデンダルの触手が伸びた。

 ガインッ!

 男に触手が届く寸前に、何故かムカデンダルヒューイットは空中で弾かれた。

「なに!?」

 オオムカデンダルが声を荒らげる。
巨大な手が空中に現れ、その手が男とミーアをむんずと鷲掴みにした。

 何なんだあれは。

「おお……!プニーフタールよ!我らが主神よ!」

 男は喜びの表情を浮かべ、その名を口にした。

「プニーフタールだと……!」

 オオムカデンダルがその巨大な手を睨みつけた。
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