見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五六三

「西の繁華街だけではない。ジワジワと周辺にもジョルターは浸透しつつある。ここに接している区域では、従来の貨幣とジョルターの両方が使われ始めている。ジョルターに完全に置き換わるのも時間の問題だ」

 蜻蛉洲が当然と言う風に言った。

「じゃあ今までの貨幣は?」

 俺は蜻蛉洲に尋ねた。

「うちで買い取っているからな。捨てるほど有る」

 捨てるほどと言う言い方が、これほどしっくりこない事も無いだろう。
そんなに金貨やら銀貨が集まっているのか。

「どこから流通しているのか判らんが、まだまだ出てくるだろう。それを全部潰す。もうしばらくすれば、金貨を誰も欲しがらなくなる。そうすればもうこっちの勝ちだ」

 そんな事が有り得るだろうか。
金貨を誰も欲しがらなくなるなんて。

「利便性だ」

利便性?

「商売人が両方釣りを用意するのは大変だろ?ジョルターのほうが多く流通すれば、ジョルターだけ受け付ける店も出てくる。そうしたら使う方もジョルターの方が受け取ってもらえるのだからジョルターを優先して使うだろ」

 オオムカデンダルが椅子を回転させながら言った。
彼はこの椅子で回るのが好きだ。

 しかし、金貨の発行元が不明だとは。
俺は何の疑いも無く帝国が作っているのだとばかり思っていた。
それが違うとなれば、いったい誰がどこで作っているんだ。

「俺は少し判ってきたぜ」

 オオムカデンダルが言う。
本当か。

「発行元を誰も知らない。人々が気付いた時にはもう有ったと言う。普通は人間が利便性の為に貨幣を造るもんだ」

 また利便性だ。

「だが、人より先に金がある。つまり誰かが人間が使う事を前提に、先に金を用意した訳だ。手元に来た金貨で一番古い物は六五〇〇年前だった」

 六五〇〇年前だと。

「じいちゃんに聞いたら、この世界は太古の昔は神々と人類が一緒に暮らしていたんだそうな。にわかには信じられんが、この世界ではそうらしい。六五〇〇年前とはそう言う神代の時代、その直後くらいなんだとか」

 スケールが大きすぎて良く判らんな。
つまり何か。
神々が造ったとでも言いたい訳か。

「そう言う事になるな。ま、邪神なんて物を見てしまったからには、全くのおとぎ話と切り捨てる訳にもいかんだろ」

 じゃあ、神々が今もせっせと金貨を鋳造しているのか。
想像すると笑えるな。

「せっせと鋳造してるかどうかは判らんが、意外と機械でプレスしてたりするかもな」

 オオムカデンダルはそう言って大笑した。
良く判らんが、いつものオオムカデンダルジョークだ。
しかし、神々が造った貨幣を駆逐すると言う事は……

「俺は、神がこの世界と人類を支配する為に金を造っていると考えている。そして、我々はそれと競合する事になる」
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