見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五七一

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「管理人。聞こえるかい」

「はい。何でしょうか?」

 呼び掛けに管理人はすぐに答えた。
昼夜を問わず年中無休だ。
これって本当は実に凄いな。
たまには彼にも休みをあげたいくらいだ。

「蜻蛉洲を呼んでくれないか?」

「判りました。しばしお待ちを」

 管理人はそう言うと沈黙した。
今まさに蜻蛉洲を呼び出しているのだ。

「なんだ」

 ややあって、すぐに蜻蛉洲が出た。
余計な言葉を口にしない。
すぐに本題からだ。
俺が悪い訳でも無いが何故か少し緊張する。

「実は……」

 俺はソル皇子の件を伝えた。

「……なるほどな。お前の選択は正しい。良く俺に言ってくれた」

 蜻蛉洲の言葉に俺は安堵した。
これで断るにも大義名分が出来たのだ。

「……ただ。残念な事がある」

 蜻蛉洲が言葉を続ける。
なんだ、あらたまって。

「それは……今ここに百足が居ると言う事だ」

 俺は膝から崩れ落ちた。
それを先に言えよ。

「勘が鋭いと言うか、間が悪いと言うか。腹立たしい事この上ない」

 そばにオオムカデンダルが居ると告げた後に、ここまで毒が吐ける物なのか。
蜻蛉洲は、はばかり無く舌打ちをした。

「何だよー。邪険にするなよな」

 オオムカデンダルの声だ。
俺は頭を抱えた。

「……俺は蜻蛉洲を呼び出した筈だが、何故一緒に居るんだ?」

 俺は破れかぶれで尋ねた。
どうせ後で何か言われるのだ。
言いたい事は言っておけ。

「居ちゃ悪いか?まあ、強いて言えば勘だな。お前が俺では無く蜻蛉洲を呼び出した。何の用かなと」

 嫌な野郎だな、まったく。

「断れ。それ以外無い。何故に部外者をこうもヒョイヒョイと呼び寄せる必要があるのか。判ったな」

 蜻蛉洲がそう言って通信を切ろうとした。

「待て。断るな。連れて来いよ。おしゃべりしようぜ」

「ふざけるな!そんなにしゃべりたければ、お前の為にしゃべるぬいぐるみでも作ってやる。だから今は我慢しろ。いいか、絶対に連れて来るなよ。今は忙しい時期なんだ。おかしな問題を増やすな」

「レオ!絶対に連れて来い。連れて来なかったら……判ってるな?」

 板ばさみだ。
どうするんだ、これ。
ガチャガチャしてる間に通信が切れた。
たぶん蜻蛉洲が切ったのだ。
これ以上オオムカデンダルに話させたく無かったのだろう。
気持ちは判る。

「どうじゃ?不思議な力で会話しておったのじゃろ?何と言うておる?」

 ソル皇子は期待に目を輝かせながら答えを待った。
ああ、俺はどうすれば良いんだ。

「……連れて行けば良い」

 銀猫がポツリと言った。
俺は意外に思って驚いた。

「しかし……」

 俺は答えに窮する。

「殿下が何を考えているのか、上に判断してもらえば良かろう。生かすも殺すも上が判断するさ……」

 銀猫は鋭い目でソル皇子を見ながら言った。
殿下を前にそれを言うか。
俺は頭を掻いた。
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