見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五七六

「恐れながら、この屋敷の精霊みたいな物だとお考え下されば、理解がしやすいかと」

 俺はソル皇子に言葉を掛けた。
俺も最初は意味が理解できなかったから、ソル皇子の気持ちは良く判る。

 管理人とはこの屋敷その物であり、もっと言えば『緑の谷』の本館が本体だ。
理屈は判らんが、遠く離れたこのミスリル銀山の拠点にも繋がっており、言わば『同時に見ている』と言う訳だ。

「ふうむ。何と言うて良いのか……言葉が追い付かぬ」

 ソル皇子の口は開きっぱなしだった。

「言えば大抵の事はやってくれる。まさに『管理人』だ。ウチの本当の陰の実力者は、彼かもな」

 オオムカデンダルはそう言って笑った。
これは半分冗談で、半分は本当だろう。
ネオジョルトは、管理人無しでは成り立たない。
全部手作業でやっていたら、ネオジョルトの行動に、このスピード感は無い。

「頼もしいの。余の配下にも欲しいくらいだ」

 ソル皇子が呟く。

「はっはっはっ。管理人をアンタらが作ったら、帝国その物が傾くぞ」

「そんなに掛かるのかえ?」

「この世界の半分は買えるな」

 ソル皇子の疑問にオオムカデンダルが答えた。
さらっと凄い事を言っているな。
俺も内心、皇子と一緒に驚いた。

「……そんな金をいったいどこから」

 そう思うのも無理は無い。
働いている様子も、略奪して周っている様子もなく、何故このような馬鹿げた富を持っているのか。
真実を知ったらソル皇子はきっと卒倒するな。

「ふふ。まあ、そこは悪の秘密結社だからと言う事にしておいてくれ。ミステリアスな方が雰囲気出るだろ?」

 オオムカデンダルが悪戯っぽく笑った。

「ふ。確かにの。全部晒してしまうのは野暮と言うもの」

 ソル皇子もそれ以上は聞かなかった。
何と言うか、その辺の機微もわきまえているのだな。

「で、皇子の目に俺たちはどのように見えているのか、だが」

「おお、そうであったな」

 ソル皇子は言いかけていた事を、すっかり忘れていたようだ。
出されたケーキを不思議そうに眺めてから、指でクリームをすくう。
それを口に入れると、再び目を丸くした。

「……これは、土産にもらえんのかの?出来ればたくさんが良い」

「ああ、良いとも」

 ソル皇子はケーキとお茶を交互に口に運びながら、話を続けた。

「……帝国が今、おかしな事に巻き込まれて居るのはもう知っておるな?いや、お主たちからすれば、以前からまともでは無かったと言うかもしれんがの」

 口をモグモグさせながらソル皇子が言う。

 俺たちを討伐する為に、モンスターを帝国の城内に出入りさせるなど、表向きにも絶対にあってはならない。
それは俺にも判る。

 帝国がモンスターたちと手を握った。
必ずそう思われる。
そうなれば、他国も黙ってはいまい。

 現在帝国は、強大な軍事力を背景に周辺国に対して圧迫を強いている。
しかしこの事が明るみになれば、その周辺国に大義名分を与える事にもなりかねないのだ。

 国民に対する威光も同時に失われる。
国民の理解も協力も得られなければ、とても戦には勝てない。
必然的に帝国は終わる。
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