577 / 826
五七七
「父上はともかく、兄上はモンスター共と手を組む事に何の躊躇も無い。余もこればかりは不思議でならぬ」
ソル皇子はケーキの上に乗った大きな苺を、なるべく落とさないように周囲から食べ進めていく。
その姿に何となく親近感を感じる。
「殿下にもその理由は判らないのか。聞いてみたりしないのか?」
オオムカデンダルが尋ねた。
「勿論、余も尋ねてはみた。だが、お主たちに勝つにはこれしかないと言うばかりでの。その事自体はそうだろうとも思うが、臣民を預かる皇族がその認識で良いとは思わん。ま、そうは言うても、お主らと仲良く茶に興じておる余が言えた義理では無いのかもしれぬがの」
ソル皇子はそう言って自嘲気味に笑った。
「ただ、モンスター共からは明らかな悪意を余は感じる。手を組んで良い相手とは到底思えぬ。だがの、お主らにはそれほど悪意は感じないのじゃ。何故かの」
ソル皇子はそう言って、いよいよ残しておいた苺へと手を掛けた。
「ふふ。それは買い被りすぎだ。ただ何故悪意を感じないかと言えば、俺たちは世界を征服するつもりはあっても、帝国が欲しい訳でも、憎い訳でも無いからな。その辺なんじゃないか?」
「なるほどの」
ソル皇子は返事もそこそこに、苺にフォークを突き立てる。
そしてそれを半分だけ噛った。
「む!これは……また見事な苺よ。こんなに大きくて甘い苺は、皇子の身であっても食べた事が無い」
ソル皇子はそう言うと、あらためてオオムカデンダルを真っ直ぐに見据えた。
「これよ。皇族の贅沢など及びもつかないこのクオリティーの高さ。茶請けに出てくるデザートの、そのまた上にあしらわれたたった一粒の苺を取ってみても、到底帝国など足下にも及んでおらぬ」
オオムカデンダルはソル皇子の言葉を微笑みながら、それでいて真面目な眼差しで見ていた。
「真の実力は派手さだけでは判らぬ物。どんなに力自慢であろうとも知識が無ければ片手落ち。知識をひけらかしても同時に知恵も備わっておらねばこれも同様。両方あっても下品であっては話にもならぬ……判るかの、オオムカデンダルよ」
「ああ、判るとも。俺も同じ考えだ」
オオムカデンダルが笑ってソル皇子に同意した。
「余はの。兄上には帝国は任せておけぬと思うておる」
「!?」
俺は、いや、俺だけで無く、カルタスやオレコも、ソル皇子の言葉に驚いた。
如何にソル皇子と言えども、絶対に言ってはならない言葉だ。
ましてや、それを他人に聞かせるなど考えられない。
これは罠なのか。
俺は急にソル皇子を信用できなくなってきた。
迂闊に同意などするべきでは無い。
「余は幼き頃より兄上を慕っておった。尊敬もしておる。だがの、ここ最近の兄上は余の知っている兄上とは違う。魔物共と手を組むなど、どんな理由があっても許されるべきでは無い」
ソル皇子は力強く言いきった。
その目には、強い決意が表れていた。
ソル皇子はケーキの上に乗った大きな苺を、なるべく落とさないように周囲から食べ進めていく。
その姿に何となく親近感を感じる。
「殿下にもその理由は判らないのか。聞いてみたりしないのか?」
オオムカデンダルが尋ねた。
「勿論、余も尋ねてはみた。だが、お主たちに勝つにはこれしかないと言うばかりでの。その事自体はそうだろうとも思うが、臣民を預かる皇族がその認識で良いとは思わん。ま、そうは言うても、お主らと仲良く茶に興じておる余が言えた義理では無いのかもしれぬがの」
ソル皇子はそう言って自嘲気味に笑った。
「ただ、モンスター共からは明らかな悪意を余は感じる。手を組んで良い相手とは到底思えぬ。だがの、お主らにはそれほど悪意は感じないのじゃ。何故かの」
ソル皇子はそう言って、いよいよ残しておいた苺へと手を掛けた。
「ふふ。それは買い被りすぎだ。ただ何故悪意を感じないかと言えば、俺たちは世界を征服するつもりはあっても、帝国が欲しい訳でも、憎い訳でも無いからな。その辺なんじゃないか?」
「なるほどの」
ソル皇子は返事もそこそこに、苺にフォークを突き立てる。
そしてそれを半分だけ噛った。
「む!これは……また見事な苺よ。こんなに大きくて甘い苺は、皇子の身であっても食べた事が無い」
ソル皇子はそう言うと、あらためてオオムカデンダルを真っ直ぐに見据えた。
「これよ。皇族の贅沢など及びもつかないこのクオリティーの高さ。茶請けに出てくるデザートの、そのまた上にあしらわれたたった一粒の苺を取ってみても、到底帝国など足下にも及んでおらぬ」
オオムカデンダルはソル皇子の言葉を微笑みながら、それでいて真面目な眼差しで見ていた。
「真の実力は派手さだけでは判らぬ物。どんなに力自慢であろうとも知識が無ければ片手落ち。知識をひけらかしても同時に知恵も備わっておらねばこれも同様。両方あっても下品であっては話にもならぬ……判るかの、オオムカデンダルよ」
「ああ、判るとも。俺も同じ考えだ」
オオムカデンダルが笑ってソル皇子に同意した。
「余はの。兄上には帝国は任せておけぬと思うておる」
「!?」
俺は、いや、俺だけで無く、カルタスやオレコも、ソル皇子の言葉に驚いた。
如何にソル皇子と言えども、絶対に言ってはならない言葉だ。
ましてや、それを他人に聞かせるなど考えられない。
これは罠なのか。
俺は急にソル皇子を信用できなくなってきた。
迂闊に同意などするべきでは無い。
「余は幼き頃より兄上を慕っておった。尊敬もしておる。だがの、ここ最近の兄上は余の知っている兄上とは違う。魔物共と手を組むなど、どんな理由があっても許されるべきでは無い」
ソル皇子は力強く言いきった。
その目には、強い決意が表れていた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
あなたが愛人を作るのなら
あんど もあ
ファンタジー
結婚して八年の夫が、愛人を作った。それも私の推しの女優を! 「君と違って彼女には才能がある」と言う。ならば、私も才能のある愛人を持つ事にいたしましょう。愛人の才能を花開かせる事が出来るのはどちら?
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~
namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。
父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。
だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった!
触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。
「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ!
「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ!
借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。
圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。
己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。
さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。
「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」
プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。
最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!