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六〇四
「誓うだと?」
この国で誓いを立てたら、それは絶対である。
ユピテル皇子は少しトーンを落とした。
「それでは誓って皇位には興味が無いのだな?」
「はい」
「……うむ。それならば良いのだ」
ユピテル皇子は納得した様子で咳払いをした。
「ところでソル殿下。ネオジョルトとはどのようなご関係で?」
九条晃が代わりにソル皇子に尋ねた。
コイツは苦手だ。
「どのような?お前たちに命を狙われた所を、彼らが救ってくれたのよ。言うなれば命の恩人かの」
ソル皇子が皮肉たっぷりに笑顔で返した。
「ご冗談を。私が殿下のお命を狙う筈がございません」
「そうかの。ま、どのみちこの前の戦闘に巻き込まれたのは事実。巻き込んだどさくさに余が死んでも、それは詮無き事……よの?」
晃は微笑んでそれ以上反論しなかった。
否定も肯定もしないのか。
判りにくいが、真意を悟らせない為には次善策か。
「用件はお済みでしょうかな?」
「うむ。済んだ」
そう言うとユピテル皇子は踵を返して、立ち去った。
「殿下、僭越ながら一つだけ。ネオジョルトは信用してはなりません。彼らは世界征服を吹聴しますが本気です。出来ないなどと思いません様に」
今度はソル皇子が微笑んで、笑顔で黙って頷いた。
腹の探り合いか駆引きか、やはり俺には真似が出来ん。
「……そんな事は知っておるよ」
晃も立ち去った後、ソル皇子は小声でそう呟いた。
そうか。
ソル皇子も世界征服を冗談などとは思っていないのか。
まあ、あれだけの力を目の当たりにしたのはソル皇子くらいだ。
信じる気にもなるだろうな。
「それだけでは無いぞ」
ソル皇子が言った。
「あやつらが征服した世界と言う物に、余も興味がある」
そう言ってソル皇子は笑った。
皇位継承権第二位とは言え、皇子がそんな事を言って良いのか。
帝国は無くなるかも知れないんだぞ。
「帝国が無くなる事が問題なのでは無いぞ。それで世が良くなるなら、余は別に構わぬ」
そう言ってまた笑う。
性格は正反対だが、どこかオオムカデンダルを思わせるのは何故なのか。
「ほほっ。変人だからではないかの」
俺はそれ以上何も言わずに皇子の後ろに付き従った。
再び皇子の部屋に戻ると、ソル皇子がケーキ増量の件を俺に相談してきた。
「聞いてみましょう。おそらく出来るとは思いますが」
俺はそう言って管理人を呼び出した。
「管理人。オオムカデンダルを頼む」
「かしこまりました」
しばらくしてオオムカデンダルが出た。
「良いぞ」
出るなり返事からとは。
さてはずっと聞いていたな。
いや、見ていた筈だ。
「倍だと要求通りで面白くないな。よし、五倍持たせよう」
五倍。
いや、別にもう驚きはしないが。
「五倍持たせると言ってますが」
「なんと!そんなにか!」
「はい」
オオムカデンダルが更に続ける。
「ついでにケーキの種類も変えよう。五種類ずつ用意する。消化しきれなければ、街の人間にも配ってやれ。喜ぶだろ」
太っ腹だな。
何の関係も無い街の人間にもやるのか。
と言うか、彼らが何かをケチった事など一度も無かったな。
いつでも必要な数の遥か上を出してくる。
「ふふ。そのくらい出来なければ人は動かせん」
オオムカデンダルはそう言い残して通信を切った。
この国で誓いを立てたら、それは絶対である。
ユピテル皇子は少しトーンを落とした。
「それでは誓って皇位には興味が無いのだな?」
「はい」
「……うむ。それならば良いのだ」
ユピテル皇子は納得した様子で咳払いをした。
「ところでソル殿下。ネオジョルトとはどのようなご関係で?」
九条晃が代わりにソル皇子に尋ねた。
コイツは苦手だ。
「どのような?お前たちに命を狙われた所を、彼らが救ってくれたのよ。言うなれば命の恩人かの」
ソル皇子が皮肉たっぷりに笑顔で返した。
「ご冗談を。私が殿下のお命を狙う筈がございません」
「そうかの。ま、どのみちこの前の戦闘に巻き込まれたのは事実。巻き込んだどさくさに余が死んでも、それは詮無き事……よの?」
晃は微笑んでそれ以上反論しなかった。
否定も肯定もしないのか。
判りにくいが、真意を悟らせない為には次善策か。
「用件はお済みでしょうかな?」
「うむ。済んだ」
そう言うとユピテル皇子は踵を返して、立ち去った。
「殿下、僭越ながら一つだけ。ネオジョルトは信用してはなりません。彼らは世界征服を吹聴しますが本気です。出来ないなどと思いません様に」
今度はソル皇子が微笑んで、笑顔で黙って頷いた。
腹の探り合いか駆引きか、やはり俺には真似が出来ん。
「……そんな事は知っておるよ」
晃も立ち去った後、ソル皇子は小声でそう呟いた。
そうか。
ソル皇子も世界征服を冗談などとは思っていないのか。
まあ、あれだけの力を目の当たりにしたのはソル皇子くらいだ。
信じる気にもなるだろうな。
「それだけでは無いぞ」
ソル皇子が言った。
「あやつらが征服した世界と言う物に、余も興味がある」
そう言ってソル皇子は笑った。
皇位継承権第二位とは言え、皇子がそんな事を言って良いのか。
帝国は無くなるかも知れないんだぞ。
「帝国が無くなる事が問題なのでは無いぞ。それで世が良くなるなら、余は別に構わぬ」
そう言ってまた笑う。
性格は正反対だが、どこかオオムカデンダルを思わせるのは何故なのか。
「ほほっ。変人だからではないかの」
俺はそれ以上何も言わずに皇子の後ろに付き従った。
再び皇子の部屋に戻ると、ソル皇子がケーキ増量の件を俺に相談してきた。
「聞いてみましょう。おそらく出来るとは思いますが」
俺はそう言って管理人を呼び出した。
「管理人。オオムカデンダルを頼む」
「かしこまりました」
しばらくしてオオムカデンダルが出た。
「良いぞ」
出るなり返事からとは。
さてはずっと聞いていたな。
いや、見ていた筈だ。
「倍だと要求通りで面白くないな。よし、五倍持たせよう」
五倍。
いや、別にもう驚きはしないが。
「五倍持たせると言ってますが」
「なんと!そんなにか!」
「はい」
オオムカデンダルが更に続ける。
「ついでにケーキの種類も変えよう。五種類ずつ用意する。消化しきれなければ、街の人間にも配ってやれ。喜ぶだろ」
太っ腹だな。
何の関係も無い街の人間にもやるのか。
と言うか、彼らが何かをケチった事など一度も無かったな。
いつでも必要な数の遥か上を出してくる。
「ふふ。そのくらい出来なければ人は動かせん」
オオムカデンダルはそう言い残して通信を切った。
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◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています