見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
605 / 826

六〇五

 翌朝。
俺はソル皇子と共に、ケーキの受け取りの為に城門の前に出た。
いつもの時間ぴったりにメタルシェルが現れる。
着陸したメタルシェルから降りて来たのは、フィエステリアームとオオムカデンダルだった。

「よ。上手くやってるか?」

 オオムカデンダルは消えている俺に対して手を挙げた。

「たぶん……な」

 俺は自信無さげに答える。
たぶん上手くやれてはいると思う。
九条晃がどこまでこちらに気付いているのかは判らないが。

「それはそうと毎朝ここで受け渡しするのはそろそろ危険だと思うんだが」

 いくらなんでも目立ちすぎる。

「大丈夫だ。直接目にしない限りは見付かりゃしない。音もしないしレーダーにも引っ掛からないからな」

 直接見られるだろ。
こんだけでかいんだぞ。

「ビビるなよ。余計に疑われるぞ」

 オオムカデンダルがフィエステリアームを横目に言った。
俺はアンタほど強心臓じゃない。

「オオムカデンダル。終わった」

 フィエステリアームが冷蔵庫を運び終えて言った。

「このサイズだともう城には搬入できないだろ。これはここに置いておけ」

 大胆だな。

「別に構いやしない。殿下の部屋にあるヤツはもらってくれ」

「ほほ。良いのかえ?」

「必要ならまた作るさ」

「そうか。ならばありがたく頂戴しようかの」

「人手を頼んでここから運ばせると良い。台車も用意したから使ってくれ」

 悪の秘密結社のくせに気配りが細やかだな。

「これでケーキと珈琲が五千か……」

 俺はしみじみ巨大冷蔵庫を眺めた。

「いや。一万だ」

 え? 

「いや、あの後どうせなら馬鹿みたいに作って街にもバラ撒いた方が面白いんじゃないかと思ってな。急遽増やした」

 簡単に言ってくれるな。
一万だと?
業者か。

 いや、業者と言えども一日で一万など不可能だ。
ましてや毎日続けるなど現実的ではない。
さすがは秘密結社。
地味に力を見せてくるな。

「じきに戦いになる。街にも被害が及ぶかもしれんからな。今のうちに印象を良くしておけ」

 オオムカデンダルがソル皇子に向かってそう言った。

「うむ。判った。心遣い感謝する」

「良いってことよ」

 俺はオオムカデンダルに尋ねた。

「戦闘になるのか?街まで巻き込むような大規模戦闘か?」

「大規模と言うか、相手はベクターシードと愉快な仲間たちくらいだろ。五人だが火力があるからな、迷惑かけてしまうかもしれん」

 なるほど。
相手はたった五人だが、火力は大型モンスターが暴れるくらいにはなりそうだ。
都市壊滅みたいな事は避けないと。

「ま、それをケーキごときで何とかしようって所が、むしが良くもあるんだが」

 その自覚はあるんだな。
どうせ壊れた家屋も面倒見る気でいるんだろ。
なんにせよ、なるべく街への被害は抑えたい。

「のう、オオムカデンダルよ。九条晃は何者ぞ?」

 ソル皇子が尋ねる。

「ああ、あれは役人だよ。公務員さ」

「コウムイン?」

「国に仕えてるんだよ。安全を守る為の組織に属していたんだがね。当然世界征服を企む俺たちにとっては天敵って訳だ」

 天敵って、彼らを止められる者が居るのか。
俺はその事実にこそ驚いた。
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

元婚約者だったお兄様が後悔したと私に言ってくるのですが…

クロユキ
恋愛
親同士が親友だったと将来お互い結婚をして子供が生まれたら婚約を結ぶ約束をした。 お互い家庭を持ち子供が生まれたが一家族の子供は遅い出産だったが歳が離れていても関係ないとお互いの家族は息子と娘に婚約を結ばせた。 ジョルジュ十歳、オリビア0歳で親同士が決めた婚約をした。 誤字脱字があります。 更新が不定期ですがよろしくお願いします。

【完結】1王妃は、幸せになれる?

華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。 側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。 ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。 そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。 王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?

親世代ではなかったのですか?

立木
恋愛
親世代が「乙女ゲーム時代」だったと思っていたら、子世代も「乙女ゲーム」だった。 ※乙ゲー転生ですが要素は薄いです。 ※別サイトにも投稿。 ※短編を纏めました。