見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六〇八

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「くっ……!」

 ガイもバルバも狼狽している。
仕方がない。
一介の冒険者に、人心がどうのと言った所でどうにか出来る話では無い。

「晃を呼んで来いよ。お前らじゃ話にならん」

 オオムカデンダルは、あえて九条晃を要求した。
居ないなら好都合じゃないか。
何故わざわざ呼ぶ。

「そんなの仕返ししたいからに決まってんだろ」

 は?

 呆れた。
本気でそれが理由なのか。

「うるさいな。俺は二度負けてんだ。一回はここで返しておかんと」

 二回も負けている?
本当か?

 「……いいだろ別に。負けたからこんな世界に来る羽目になったんじゃねーか」

 それは確かに。
大規模な爆発に巻き込まれて、死んだと思ったらこの世界に居たと言っていたな。
じゃあ、それをやったのが九条晃って事なのか。

「まあ、アイツ一人にやられた訳でも無いが同じ事だ。国が総力を挙げて決戦に挑んできたからな。最大の立役者はアイツで間違いない」

 そうだったのか。

「いつでも体制側に付く所が公務員の悲しい性だな。だが、今回はそうはいかないぜ」

「そういうお前はいつからカフェを始めたんだ?秘密結社は廃業か?」

 いつの間にかガイたちの側に男が立っている。
九条晃だ。

「……来たか。いいやこっちも本業だ。俺のする事に副業なんかあるか。全部繋がってるんだよ」

「じゃあ、やはり帝国を滅ぼす作戦の一環と言う事か」

「権力の犬は発想が貧困で嫌だねえ」

「……なんだと?」

 オオムカデンダルに言われて九条晃が気色ばむ。

「判らんか?まあ、判らんだろうな」

 オオムカデンダルはせせら笑うように言った。

「いつでも体制が正しい。自分たちが正しい。多数派が正義だ。そんな風な価値観に縛られてりゃ楽だもんな。自分のおつむはどこに置いて来たんだ?ママのお腹の中か?」

「ふん。少なくとも貴様が正しいとは俺は思わん」

「別にいいよ。人の考えはそれぞれ自由だからな。だが、それに従わないのも俺の自由だ」

「相変わらず詭弁ばかりだな。貴様のはただの自己中心的な思想だ。世の中のルールを破壊し、自分一人の思想で勝手に世の中を変えて良い訳が無い」

「ふふ。そっちこそ相変わらず青臭くて安心したよ。今日はそんな事はどうでも良いんだ。お前に借りを返したいだけだからな」

 オオムカデンダルはそう言うとアゴを上げた。
見下している。
オオムカデンダルは九条晃を見下しているのだ。

「ふ。どうせ貴様は力で叩かんと判らんからな。いや、叩かれても判らんだろうが」

「お互い様だろ」

「ああ、そうだな。ガイ、みんな、行くぞ!」

「おう!」

 九条晃の声に四人が応える。

「装着!」

 五人同時に叫ぶと全員がブレスレットを手で押さえる。

 カッ!

 まばゆい光を発して五人が変身した。

「ふふ、変身!」

 オオムカデンダルもくるりと一回転する。
その姿はたちまち怪人オオムカデンダルに変わる。

「あれ。オオムカデンダル、僕も手伝おうか?」

 フィエステリアームがオオムカデンダルが変身したのを見てそう言った。
こっちは緊張感無いな。

「いや、そのまま続けてくれ。俺たちは向こうでやる」

「判った」

 しかし、メイドたちや民衆はそうはいかない。
全員が腰を抜かしてその光景を見ている。
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